吉井町(よしいちょう)は、佐世保市北部にある町。福井洞窟や御橋観音などの観光スポットで知られていますが、きれいなアーチ橋がいくつかあることはあまり知られていないかもしれません。これらの橋は昭和初期に伊万里と佐世保を結んでいた伊佐線(現在の松浦鉄道)の吉井駅と潜龍ヶ滝駅の間に作られたもの。吉井川橋梁、吉田橋梁、福井川橋梁の3つです。この3つは「官設鉄道時代の技術を伝える貴重な橋梁」として、2006年に国の有形文化財の建造物の部門に登録されました。吉井町にはこの3つのアーチ橋の他にも、樋口橋というアーチ橋があります。吉井町に出かけて橋巡りをしてみしましょう。
吉井川橋梁(よしいがわきょうりょう)は1944年に作られたアーチ橋です。佐世保駅から北に約12キロ行った所にあります。橋の長さは46メートル。10メートルのスパンで4つのアーチが川に対して少し斜めに並んでいます。背後にある山の緑にコンクリートのアーチ橋が良く映えきれいです。
吉井川橋梁を初め後で紹介する2つの橋梁はすべてコンクリートで作られています。普通ならコンクリートの強度を上げるために鉄筋を入れるのですが、建設当時は戦争中で鉄が不足。そのため代わりに竹材を使ったのではと推測され調査が行われました。この調査では竹の使用を確定することはできませんでしたが、地元には、竹筋を描いたスケッチが残っていたり、関係者の証言があるので竹筋が使われた可能性は高いと言われています。
©長崎県観光連盟 4つのアーチが並ぶ吉井川橋梁
吉田橋梁(よしだきょうりょう)は1939年に建設されたアーチ橋。橋の長さは58メートル。コンクリートの5つのアーチが10メートル間隔で並んでいます。
コンクリートのグレーが周りの新緑に良く映え、そこに電車が通過して行く光景は、なんとも情緒が漂います。この橋は、先に紹介した吉井川橋梁から北方向に約500メートルの所に作られています。
©長崎県観光連盟
コンクリート製のアーチが5つ並ぶ吉田橋梁
By sk01
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松浦鉄道の電車が吉田橋梁を渡っていきます。
松浦鉄道に作られた3つのアーチ橋の最後の一つは福井川橋梁(ふくいがわきょうりょう)です。この鉄橋は1939年に吉井町と松浦市をつなぐ県道40号線の上に架けられました。橋の長さは79メートル(アーチ部の長さは67メートル)で、20メートルスパンのアーチが3つ並んでいます。道路からの高さは20メートルとかなりの高さです。
©長崎県観光連盟 国道40号線を車で移動すると前方に福井川橋梁が見えてきます。
松浦鉄道上作られた3つのアーチ橋の他に、吉井町には「樋口橋(ひぐちばし)」と呼ばれるアーチ橋もあります。1922年に、吉井町を流れる佐々川の本流に架けられた長さ36メートルの橋です。アーチは2つあり、皇居の二重橋のイメージを真似て作られたと言われています。これまで紹介したコンクリート製のアーチ橋とは異なり、樋口橋は石を積み重ねて作ってあります。それだけに石積みの模様がとてもきれいで優美な雰囲気が漂います。樋口橋は佐世保市の有形文化財に指定されています。
佐世保市吉井町にある4つのアーチ橋を紹介しました。最初の3つは松浦鉄道の鉄橋として作られ、最後の樋口橋は車や人が通る橋として作られました。どの橋もきれいなアーチがいくつか並び美しい光景を造り出しています。どれも大正から昭和初期に作られたもので、日本近代化の発展の様子が分かります。ぜひ吉井町に出かけて見学してみてください。
©長崎県観光連盟
石を積み重ねて作られた樋口橋
©長崎県観光連盟
樋口橋も佐世保市の有形文化財に指定されています。
写真提供:長崎県観光連盟ほか
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
掲載日:
2020/02/20
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
【吉井川橋梁】〒859-6321 長崎県佐世保市吉井町前岳
【吉田橋梁】〒859-6321 長崎県佐世保市吉井町前岳
【福井川橋梁】〒859-6305 長崎県佐世保市吉井町直谷
【樋口橋】〒859-6325 長崎県佐世保市吉井町大渡