壱岐島内をドライブしていると目に付くのが「古墳」の案内板。島の中央となるエリアに大小合わせて約280基があるとのことで、これは長崎県内に現存する古墳のおよそ6割を占めるそうです。ほとんどの古墳は5~7世紀につくられていて、当時の壱岐が中国大陸や朝鮮半島との交易で重要な拠点として栄えていたことを思わせます。
このうち、鬼の窟(おにのいわや)古墳や双六古墳など6基は国の史跡にも指定されています。
古墳とは、地域の有力者のお墓です。壱岐では、丸い小さな丘のような「円墳」、丸と四角がつながって「鍵穴」のような形に見える「前方後円墳」の2種類の形があり、棺と一緒に土器や武器、装飾品などの「副葬品」が埋葬されていました。これらは大陸から伝わったもので、壱岐の有力者たちが莫大な富を得ていたことをうかがわせます。
円墳が集まった「百合畑古墳群」に車を停めて見学してみると、一見、墓とは思えないこんもりした小山です。6~7世紀につくられたと聞き、1500年も前にこの地で墓を造成した人たちがいて、ここで眠り続けてきた長い年月を思うと、本当に不思議な気持ちがしました。遥かなる昔―どんな生活をしていたのでしょうか。興味が沸いてきます。
壱岐にはおよそ280基もの古墳があり、古墳内に入って見学も可能です
ゆるやかな小山に見え、古墳(墓)というより、自然と一体になっているようです
笹塚古墳の入り口。巨大な石を積み上げてあり、クレーン車などがない時代の技術にも注目です
古墳や壱岐の歴史がもっと知りたくて、チビちゃんがお昼寝している間に、「壱岐風土記の丘」を訪ねてみました。壱岐の歴史については、「一支国博物館」や「原の辻ガイダンス」(冒険181、冒険337で紹介)でも学ぶことができます。
壱岐風土記の丘には、壱岐の歴史やそれぞれの古墳の概要が分かりやすくパネルで展示されています。中でも面白かったのが、昔の人たちも巨石でつくられた古墳の「石室」を「どうやってつくったのだろう、これは人間でなくて『鬼』がつくったに違いない」と考えたという話です。そこで、壱岐では古墳を「鬼の窟(いわや)」とか「鬼屋(おにや)」などと呼んだそうです。壱岐には「その昔、島には5万匹の鬼がすんでいた」と「鬼ケ島伝説」も残っていますが、鬼がつくったと考えられた古墳も鬼ケ島伝説を生み出す理由の一つになったのかもしれない、とのことでした。面白いですね。
風土記の丘には、江戸時代中期に実際に壱岐の人が住んでいた家も移築されて見学できるようになっています。「母屋」、子どもに家を譲った老夫婦が住む「隠居(インキョ)」、「納屋」、「牛屋(牛小屋)」の建物があり、家の背後には島の強い北西からの風を防ぐ「防風林」が植えられています。農工具や生活用品も展示された家の中を見ていると、昔にタイムスリップした気分になります。
風土記の丘の駐車場付近には「掛木古墳」があり、この古墳も実際に中に入ることができます。中は天井が低いので、身をかがめて進むと、石でできた「棺」が!ここに埋葬されていたのか、と想像すると、ちょっとドキっとした体験になりました。
壱岐風土記の丘。江戸時代の壱岐の住宅が移築されています
掛木古墳。内部に入れる古墳もあり、これはいい経験でした
江戸時代の壱岐の住宅。昭和の時代まで実際に使われていたそうで、暮らしぶりが垣間見えます
チビちゃんが寝てる間に、さらに!と「一支国博物館」まで足を延ばしてみました(・・・と、ここでチビちゃん起きたので、館内ではベビーカーをお借りして見学)。ちょっと早足になってしまったのですが、ジオラマや子どもたちが楽しめる展示の工夫がたくさんあって、弥生時代の壱岐(一支国)の様子を知ることができました。このジオラマ、とってもかわいらしくて、農業や漁のようす、市場での物々交換、祭祀や埋葬、コミカルな表情のフィギュアたちでいきいきと再現されていて、何だか声が聞こえてくるような、親近感。この時代にますます興味を持ちました。
そして、展望室から見張らせる原の辻遺跡などぐるりと360度の景色。川から船がついて、交易が始まり、稲作が行われ、広がっていく人々の暮らし・・・展示室で学んだ様子が浮かんできて、眼前の景色と重なり、なんだかまた、タイムスリップした気分になる、そんな不思議な時間となりました。
チビちゃんは、この後、1階にある「キッズこうがく研究所」へ。長靴に履き替え、砂場(砂、ではないのですが)で発掘を楽しみます。楽しすぎて、「まだ、やるー!」と閉館時間まで満喫。ほかにも子どもたちが歴史や考古学に触れるプログラムがたくさんあって、ここも成長にあわせて連れてきたいと思わせる施設でした。
一支国博物館。建築家の黒川紀章さんデザインのカッコイイ形の建物
©(一社)長崎県観光連盟
弥生時代の壱岐での暮らしを思い起こさせるジオラマが楽しい
展望室から見た原の辻遺跡。弥生時代にはどんな景色が広がっていたのでしょう
写真提供:(一社)長崎県観光連盟
文・写真:長崎はな
長崎生まれ。長崎で好きなものは、お刺身、一口餃子、対馬のはちみつ、佐世保バーガー、島原のかんざらし、諫早のうなぎ、チリンチリンアイス・・・。旅好き、食いしん坊がわんぱく盛りの「チビちゃん」と長崎県内をめぐります!
掲載日:
2023/03/31
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
壱岐市芦辺町芦辺浦636-32