海水浴場や奇岩など見どころが多い壱岐。今回は壱岐の東海岸にある芦辺町と島の中央のエリアの観光スポットを紹介します。この2つのエリアには遺跡や古墳の跡、そして関連の資料を展示している博物館など、壱岐の歴史が辿れるスポットがいっぱい。弥生時代までタイムトリップしてみましょう!
白い壁の建物に、緑の天然芝が植えられた波状の屋根。ちょっと風変わりなこの建物は2010年、壱岐の芦辺町に開館した「一支国博物館」です。「一支国(いきこく)」というのは壱岐の昔の名称。そう、壱岐は昔、一つの国としてみなされていたんです。一支国は中国で書かれた日本についての歴史書「魏志倭人伝」の中にも出てきます。この書物が作られたのは西暦280年~297年の間ですから、壱岐には、今からもう1700年以上も前、つまり弥生時代にすでに人が住んでいたことになりますね。この博物館には、出土によって見つかった当時の遺物を初め、江戸時代に至るまでの時代毎の資料が全部で2000点所蔵・展示されています。そのうち実物大で展示されているものは、100点。例えば日本本土や朝鮮半島との間を行き来していた実物大の船など、当時の様子が実感できます。
©長崎県観光連盟
一支国博物館。白い壁と天然芝のある波状の屋根が特徴
©長崎県観光連盟
日本本土や朝鮮半島との間を行き来していた実物大の船
©長崎県観光連盟
2009年原の辻展示館から移動した展示物
「原の辻(はるのつじ)一支国王都復元公園」は芦辺町と石田町の堺にあり、一支国博物館からも500メートルの近さ。この公園のエリアは弥生時代に一支国の都があったところで、今では国の特別史跡に指定されています。公園内には、「復元建造物エリア」「多重環濠エリア」「植物栽培園エリア」の3つのエリアがあります。復元建造物エリアには藁ぶきの建物が17棟復元され当時の村の様子がわかるようになっています。そして、遺構露出展示コーナーで、実際に発掘された土器や中国の貨幣などを見ることができます。
公園のすぐ北側には「原の辻ガイダンス」という建物が建っています。ここには原の辻遺跡が発掘されたときの調査結果などの資料を展示。その他、土器づくりやガラス玉づくりなどの古代技術も体験できます。昔の人になったつもりでチャレンジしてみてください。
原の辻(はるのつじ)一支国王都復元公園には再現された建物が全部で17棟あります。
竪穴式住居。これは使節団が滞在する間の食材などを保管するのに使われました。
竪穴式住居の中の様子。
壱岐の中央エリア(区域としては勝本町)にある「風土記の丘」は、壱岐の古墳時代から江戸時代までの歴史が学べる施設です。敷地内には「古墳館」と「古民家」が建っています。古墳館では壱岐に数ある古墳についての詳しい資料が展示されていて、古墳の概要やどの場所にあるかなどが良く分かるようになっています。古民家は江戸時代に実際に建てられた百姓武家屋敷で、それをこの風土記の丘に移築したものです。古民家の中は当時の生活の様子がわかるように再現されています。
また、駐車場近くには、直径30メートルの「掛木古墳」があります。この古墳には石をくり抜いて遺体を置く部分と蓋の両方を作った「くり抜き式家計石棺」が置かれています。長崎県ではここにしかないものです。
©長崎県観光連盟
古墳時代から江戸時代までの壱岐の歴史が学べる風土記の丘
©長崎県観光連盟
古墳館では壱岐に数ある古墳について詳しく説明する資料が展示されています。
©長崎県観光連盟
風土記の丘の駐車場近くにある掛木古墳には、くり抜き式家計石棺があります。
さて、これまでは壱岐の芦辺町と中央エリアにある歴史の跡をたくさん紹介しましたが、このエリアには手付かずの自然も残っています。よく知られているのが壱岐の東端にある八幡半島。その突端にあるのが玄界灘に面した約1キロに及ぶ海蝕崖一帯「左京鼻(さきょうばな)」です。ここから海の方を見ると海中に奇岩が見えます。細い柱を何本か束ねたような形をしており、真ん中の柱が空に向かって飛び出しています。これは、壱岐の神話に出てくる八本の柱の一つです。
ここから南に半島をぐるっと回るように車で移動すると、ちょうど半島の首のところにある「はらぼけ地蔵」に到着します。海の中に立てられた6体のお地蔵さま。赤い衣装を身に付けているのですぐわかります。昔この辺りで働いていた海女さんが遭難したため、その霊を慰めるために立てられたと言われています。6体あるのは仏教の六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天)を表しているからです。また、「はらぼけ」というのはお腹にあいている穴のことで、お金やお供えを入れるために使われています。貫通していないのは満潮になって地蔵が水没した時に、穴の中に置いたお供えものが流されないためだそうです。
©長崎県観光連盟
左京鼻近くの海中には細い柱を束ねたような奇岩が見えます。
©長崎県観光連盟
左京鼻の目の前には玄界灘が広がっています。
©長崎県観光連盟
はらぼけ地蔵は昔遭難した海女さんの霊を慰めるために立てられたと言われています。
はらぼけ地蔵から海の方を見ると2つの島が見えます。向かって右に見えるのが青島、左が赤島です。青島には橋が架かっているのでよくわかると思います。橋は315メートルあり壱岐最長。「青島大橋」と呼ばれています。青島も赤島も無人島ですが、青島には九州電力の新壱岐発電所と青嶋公園があります。青嶋公園には、グラウンド、テニスコート、アスレチック施設、遊具、展望台等が作られているので、家族でゆっくりと楽しいひと時が過ごせます。この島にはあちこちにハマユウが生育していて、夏になると白い美しい花が鑑賞できます。
壱岐の芦辺町と中央エリアには弥生時代にまでさかのぼれるほど長い歴史の跡がたくさん残っています。近年建てられた一支国博物館や原の辻一支国王都復元公園ではそうした歴史の跡を見学することができます。ぜひ訪ねて遠い昔にタイムトリップしてみてください。また東海岸には左京鼻やはらぼけ地蔵、そして青島などの観光スポットもあります。歴史探索とあわせて自然の探索も楽しみましょう!
写真提供:長崎県観光連盟ほか
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
©長崎県観光連盟
壱岐本島と青島の間に架けられた「青島大橋」
©長崎県観光連盟
青島にある「青嶋公園。遊具で遊んだり景色を眺めたりしよう!
©長崎県観光連盟
夏になると青嶋公園ではハマユウの花が咲くよ。
掲載日:
2019/10/03
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
【一支国博物館】〒811-5322 長崎県壱岐市芦辺町深江鶴亀触515番地1
【原の辻一支国王都復元公園】〒811-5322 長崎県壱岐市芦辺町深江鶴亀触1092番地5
【原の辻ガイダンス】〒811-5322 長崎県壱岐市芦辺町深江鶴亀触1092番地
【風土記の丘】〒811-5544 長崎県壱岐市勝本町布気触325番地
【はらほげ地蔵】〒811-5311 長崎県壱岐市芦辺町諸吉本村触1342-102
【青嶋公園】〒811-5312 長崎県壱岐市芦辺町諸吉南触1691番地