今回の目的地は西海市面高(おもだか)地区。市の北西端にあり、長崎市から車を走らせおよそ1時間半、小迎交差点を左折し、集落の外海(そとうみ)に面した辺りを目指します。
すると・・・
見えてきました!海につき出した青いやぐら。寒い風がびゅーびゅーと吹き付けるこの場所で作っているのが―
西海市の小迎交差点から面高地区へ
海沿いの道を走ると何やら青いやぐらが・・・
海につき出したやぐら。寒風が吹きつけます
西海市特産の「ゆでぼし大根」です。
大根をゆでて、干して、乾物を作ります。12月の初めごろから2月末まで寒い季節に作業が行われていて、農家の人たちは朝から忙しく仕事をしていました。
この海辺のやぐらには、あらかじめ切ってゆでた大根を広げていきます。外海から吹き付ける寒い季節風に一昼夜、翌日には最初の量の10分の1ぐらいまで乾燥して小さくなっています。これを集めて、さらに乾燥機にかけて「ゆでぼし大根」ができあがります。
生産量は2021年度(令和3年)は90トンありましたが、年々、農家の人の高齢化や資材が高くなっていることなどを理由にその量は減っていて、2022年度(令和4年)は50~60トンの生産が見込まれているとのことです。
それでも、「自然を利用した昔ながらの食材として、多くの人に食べてほしい」と寒さにも負けず作業が続いています。
ゆでだての大根。真っ白です
海からの風がビュービュー吹く中での作業です
「寒くないですか?」と聞くと、「動いていると暑いぐらいだよ!」とのこと
ゆでぼし大根に使われるのはこの地域でとれる「大栄大蔵大根(だいえいおおくらだいこん)」という品種。とても大きいのが特徴で、私たちがよく目にする「青首大根(あおくびだいこん)」と比べてみるとその大きさがよく分かります。大栄大蔵大根は、寒くなるとより「糖」を蓄えて甘みを増す性質で、ゆでると大根の辛みや雑味が抜けてさらに甘みが感じられるそうです。
畑から大根を収穫すると、まず、機械などを使って泥を落とし、きれいに洗っていきます。水が冷たく大変な作業です。そして大根を幅1センチ、厚さ5センチになるよう細長くカットし、釜でゆでます。1回にゆでる量は大根100本分だそうで、忙しいときには1日に12回もゆでることがあるそうです(大根1200本分!!)。
「大栄大蔵大根」。一般には販売されていないそうです
奥が「青首大根」。ゆでぼし大根に使う大栄大蔵大根の大きいこと!
トラックの荷台にいっぱい積まれた大根を次々、洗っていきます。水が冷たい!
ゆで上がった大根を、海沿いのやぐらに干し、乾かす、という作業が冬の間、続きます。
「海から強く吹いてくる冬の風は冷たいけれど、それをうまく利用することで、ゆでぼし大根はおいしくなりますよ」と教えてくれたのはゆでぼし大根の生産者代表の髙浦勝宏さん。今年の冬は特に寒くて、ゆでぼし大根には最高!と笑顔で話してくれました。
ゆでぼし大根部会の髙浦さん。大根を切る幅や厚みもよりおいしくなるよう工夫したそうです
干したばかりのときは、真っ白でとってもきれいでした
見ている間にどんどん、乾いて小さくなっていくのがわかります
冬の寒風を逆手に取って甘みのある大根をよりおいしく、長く保存できるように作られる面高地区のゆでぼし大根。昔からの知恵と農家の人たちの努力がぎゅっと詰まっていることがよくわかりました。
作業はこの冬も2月まで、晴れている日は行われるとのことで、この海岸沿いの道から作業の様子を見学することができます。ただし、駐車場などはありませんので、近隣の住民の人たちに迷惑がかからないように気を付けて見るようにしてください。また、風がとっても強くて冷たいので、しっかりと防寒することもお忘れなく。
そして、できあがったゆでぼし大根。水で戻して、いただいてみましょう。煮物にするのが定番ですが、地域の人によると、刻んで混ぜごはんにしたり、餃子の餡(あん)にしてもおいしいんですって。色々工夫して食べてみるのも楽しみです。
一晩、干すと乾燥して、すっかり軽くなっています
干すときにはやぐらいっぱいの量の大根が、干し終わりには端1列、10分の1の量になります
©JA長崎せいひ 北部営農経済センター
「ゆでぼし大根」とかまぼこの煮物はこの地域の郷土料理でもありますね
写真提供:JA長崎せいひ 北部営農経済センター
文・写真:冒険する長崎事務局
掲載日:
2023/01/27
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西海市西海町 面高地区