「ながさきサンセットロード」は長崎市の南端と平戸市の北端、ならびに松浦市の東端までをつなぐ自動車道のことです。夕方になるとこの道路から美しい夕日を眺めることができるため、サンセットロードという呼び名が付けられました。「橋でつながる教会と歴史の道」と言われているように、途中たくさんの橋が架けられ、多くの教会や史跡を訪ねることができます。当記事では、広範囲に渡るエリアの中から、長崎市の外海地区とその周辺の観光スポットを紹介します。さっそくサンセットロードを探索してみましょう!
黒崎永田湿地自然公園は2003年に開園しました。公園になる前は農業用地でしたが、長い間、農作業が行われていなかったので荒廃していました。その荒廃した土地に生息する生物をなるべくそのまま保存し、さらにその数が増えるように工夫して整備したのがこの自然公園なのです。例えば、池を作ることによってトンボが生息しやすいようにしたので、今では全国的にもトンボの数の多い自然公園として評価されています。
黒崎永田湿地自然公園から少し内陸に入った所には枯松神社があります。外海では、多くの潜伏キリシタンが信仰を守っていましたが、この神社がある場所でひそかに祈りがささげられていました。禁教が解かれた明治時代に日本人のキリスト教指導者バスチャンの師であるサン・ジワンを祀って神社が建てられました。全国的にもキリシタンを祀った神社として貴重な存在です。
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昔の農業用地を自然のまま保存した「黒崎永田湿地自然公園」
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キリシタンが建てた松枯神社
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全国でもまれな、キリシタンを祀った神社です。
サンセットロードにはたくさんの橋が架けられていますが、外海地区に架けられた主な橋には、四谷河内橋(しやごうちばし)、荒川橋、新神浦橋(しんこうのうらばし)の3つがあります。それぞれ順番に青、白、赤の色に塗られています。「ずいぶんカラフル、でもなぜ?」と思うかもしれませんね。実はこれには深い意味があるのです。
これら3つの色は、明治時代、このエリアで多くの人々を助けたフランス人宣教師ド・ロ神父の故国フランスの国旗から取ったものなのです。青は「自由」を、白は「平等」を、赤は「博愛」を表しています。
1978年、外海町(当時)はド・ロ神父の故郷ノルマンディ・ヴォスロールと姉妹都市の提携を結びました。そして1988年、四谷河内橋が架橋されたときに、他の2つの橋と併せて、3色に塗られました。その後2005年に外海町が長崎市に編入されたため、現在、ノルマンディ・ヴォスロールは長崎市と姉妹都市提携を結んでいます。
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ド・ロ神父の故国フランスの国旗の色に塗られた3つの橋。「四谷河内橋」は自由を意味する青で塗られています。
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平等を意味する白で塗られた「荒川橋」
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博愛を意味する赤で塗られた「新神浦橋」
白い荒川橋を渡って5分ほど進むと大野浜海浜公園に到着します。海岸には小さな石がごろごろ転がっているので、一見すると海水浴はできないように見えますが、夏には海水浴客で賑わいます。海岸の近くに作られた施設にシャワーやトイレが設置されているので便利です。
この海浜公園は、海水浴を楽しむのと同時に、美しい展望を楽しめる場所にもなっています。目の前には角力灘が広がり、遠方に母子島や池島が望めます。また、天気の良い夕方には、美しい夕日をじっくり鑑賞するのに最適の場所だと言えるでしょう。
海岸から10分ほど内陸に入った所には、「大野教会堂」があります。この教会堂は明治時代に赴任したフランス人宣教師ド・ロ神父が設計し、この地域の信者と力を併せて石を積み上げて1893年に完成させた教会です。教会堂の屋根には十字架のシンボルが見えます。2008年に国の重要文化財に指定されました。
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遠方に池島などの島が見える大野浜海浜公園
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ド・ロ神父が設計して、地元の信者とともに石を積んで建てた大野教会堂は国の重要文化財に指定されています。
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大野教会堂堂の屋根には十字架のシンボルが見えます。
サンセットロードをさらに北に進んでいきましょう。次のスポットは「そとめ神浦川河川公園(こうのうらがわかせんこうえん)」です。1990年に環境庁が行った調査で日本一の清流に選ばれた神浦川。この川の両岸には、芝生の広場が作られ、河川プール、遊歩道、遊具などが整備されています。小さな滝もあって水の流れを楽しむこともできます。川にはアユやテナガエビが生息し、人と自然が触れ合う場所として、夏になるとたくさんの人で賑わいます。
川底には大小さまざまな石がごろごろところがっていますが、その透き通るような水のおかげで川底までよく見ることができます。泳ぎを楽しんだり、水かけっこしたり、川に生息している動植物を観察したりなど、自然を満喫しましょう!
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1990年に日本一の清流に選ばれた神浦川
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両岸には芝生広場が整備されています。
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小さな滝もあり、水の流れを楽しむことができます。
サンセットロード外海エリアの最後のスポットは大中尾棚田(おおなかおたなだ)です。サンセット道路からは2kmほど内陸に入ります。自然の美しい風景に囲まれたこの棚田は、1999年に「日本の棚田百選」の一つに選ばれました。
もちろん季節ごとの棚田の風景も美しいですが、もしタイミングが合えば、毎年10月下旬または11月上旬の一土曜日に開かれる火祭りに参加してみるのはどうでしょう。当日は、田んぼに沿って約6000個の竹灯籠を立て、農業の発展を祈祷します。その他、餅つき体験やイノシシの焼き肉体験などのイベントが行われます。
「橋でつながる教会と歴史の道」ながさきサンセットロードの外海エリアの見どころをいくつか紹介しました。このエリアには、キリスト教に関係した出津文化村や遠藤周作文学館もあります。豊かな自然にも恵まれた美しい外海エリア。キリスト教の歴史を学びながら探索してみてください。そして1日の終わりには、海に沈んで行く素晴らしい夕日を眺めることも忘れないでくださいね。
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「日本の棚田百選」に選ばれた大中尾棚田
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稲の成長した緑の棚田。例年、秋には農業の発展を祈祷して火祭りが行われます。
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1日の終わりには海に沈んで行く夕日を眺めましょう!
写真提供:長崎県観光連盟ほか(※教会の写真掲載に当たっては大司教区の許可をいただいています。)
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
掲載日:
2020/08/09
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
【黒崎永田湿地自然公園】〒851-2325 長崎県長崎市永田町1514
【枯松神社】〒851-2326 長崎県長崎市下黒崎町
【大野浜海浜公園】〒851-2426 長崎県長崎市上大野町1410
【大野教会堂】〒851-2427 長崎県長崎市下大野町2619
【そとめ神浦川河川公園】〒851-2405 長崎県長崎市神浦向町791
【大中尾棚田】〒851-2423 長崎県長崎市神浦下大中尾町