大村市は、中世から江戸時代にかけて大村氏が治めてきたところです。玖島城が築かれるとその周辺に武家屋敷街や宿場町などが作られ町が発展しました。昔の人はどんな所に住んでどんな生活をしていたのかな。昔の大村市に戻った気持ちになって街の中を探索してみましょう。
大村市の武家屋敷街には5つの通りがあります。まず玖島城大手門に通じているのが「本小路(ほんこうじ)」。あとの4つは、「上小路(うわこうじ)」「小姓小路(こしょうこうじ)」「草場小路(くさばこうじ)」「外浦小路(ほかうらこうじ)」です。これらの武家家屋敷街の通りには今でも石垣が残っていて特別な雰囲気が漂っています。中でもユニークなのが五色塀。五色塀は大村地方独特な色のついた海石を積み上げて漆喰を塗ったものです。現存する五色塀では、草場小路にあるものが最も長く、石の色や形も見ごたえがあります。
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大村市の5つの武家屋敷街の一つ、上小路
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色のついた石を漆喰で固めた五色塀がきれいです。
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小姓小路の様子
武家屋敷街には、今でもいくつかの武家屋敷が残っていますが、その中でも当時の武家屋敷の特徴をよく伝えているのが、上小路から少し入った所にある「旧楠本正隆屋敷」です。楠本正隆は幕末の倒幕運動に参加した大村藩の三十七士の一人。明治になってからは、衆議院議長として活躍した人物です。
この武家屋敷では建物も庭園も大変よく保存され、県の有形文化財に指定されています。一般に公開されているので、入館して見学してみましょう。また春にはひな祭りが開かれ、秋にはライトアップされます。
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県の有形文化財に指定されている旧楠本正隆屋敷
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良く保存された屋敷の建物の中を見学することができます。
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庭園も手入れが行き届いてきれいです。
大村市の藩主の一人大村純忠(すみただ)は日本で初めてキリシタンになった大名です。その時には仏教が否定され、たくさんのお寺や神社は破壊されてしまいました。ところが、江戸時代に幕府が禁教令を出すと、大村藩でも仏教が復活しました。その頃(1605年)に大村市に建てられたのが「本経寺」です。この寺院は武家屋敷から北に1.5キロほど行った所にあります。
お寺の外側の道路に面した部分には「百間塀(ひゃっけんべい)」と呼ばれる長い白壁が作られ、その通りは「本経寺白壁通り」と呼ばれています。大変美しい景観を造り出していることから、大村市の「都市景観賞」を受賞しています。
境内には江戸時代後期の建物が現存し、また境内の西側には大村家歴代藩主の墓塔が残っています。この墓塔、規模が普通よりもかなり大きいのですが、それは、当時キリスト教から仏教に改宗したことを強く示すためだったと考えられています。
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キリスト教が禁じられ、仏教が復活してから建てられた本経寺。境内を囲む長い白壁は大村市都市景観賞を受賞。
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大村家の歴代藩主の墓塔があります。平均的な墓塔よりずっと大きいのは仏教へ改宗したことを強く示すため?
本経寺からさらに北に3キロほど行くと「大村純忠史跡公園」があります。
この史跡公園は大村純忠が晩年に隠居生活を送っていた場所です。別名「坂口館」。公園内には、住居だった建物は残っていませんが、唯一「館の川(たちのかわ)」と呼ばれる泉の跡が残っています。この泉はどんな干ばつの時でも水が枯れることがなかったと言われています。現在では泉周辺に作られた石組みが残りそこに苔が生え昔の面影を伝えています。
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大村純忠が晩年を過ごした「坂口館」。今は「大村純忠史跡公園」になっています。
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干ばつでも水の枯れることのなかった「館の川」。今もその面影が残っています。
大村市の武家屋敷探索の最後は、市の北部にある昔の宿場町「松原宿」です。大村市にはこの松原宿と大村宿という2つの宿場町がありました。2つの宿場町では、昔、長崎街道を使って旅をする人のために宿を提供していました。長崎街道は北九州小倉と長崎を結ぶ約230キロの道路です。松原宿はこの街道に沿って約640メートルに渡って発展していました。町の中心には十字路があり、その西側に旧松屋旅館があります。この旅館は1960年まで営業していました。外観は昔の面影が残されていますが、中は資料館に改造され、昔の大村エリアの写真などの資料が展示されています。また、例年2月の終わりから3月にかけて、ひな祭りが、11月には「松原くんち」などのイベントも開かれます。松原宿には、その他、昔の茶屋の漆喰塀も残っており、当時の宿場町の雰囲気を感じることができます。
きれいな白壁の漆喰塀や立派な武家屋敷、そして昔の藩主大村家と関係のある施設が残る大村市の探索、いかがでしたか。昔この大村の城下町に武士や町人が生活していた様子が見えてきますね。ぜひ計画して訪ねてみてください。
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長崎街道に作られた松原宿。宿場町の雰囲気がまだ残っていますね。
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1960年まで営業していた旧松屋旅館。今は建物内が資料館になっています。イベントも開かれるよ。
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昔のお茶屋の白壁が残っています。昔旅人が一休みするのに寄った所です。
写真提供:長崎県観光連盟、大村市観光コンベンション協会
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
掲載日:
2020/03/12
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
【大村武家屋敷街】〒856-0834 長崎県大村市玖島2丁目
【旧楠本正隆屋敷】〒856-0834 長崎県大村市玖島2丁目291-4
【本経寺】〒856-0822 長崎県大村市古町1-64
【大村純忠史跡公園】〒856-0017 長崎県大村市荒瀬町1116
【松原宿旧松屋旅館】〒856-0009 長崎県大村市松原本町77-1