日本の中で朝鮮半島に一番近い島「対馬」。この島の海岸では、他では見られないような絶景やユニークな地形に出会うことができます。島の中央に位置する浅茅湾からスタートして、北と南の海岸にも足を延ばし、対馬独特の風景を楽しんでみましょう!
対馬の中央付近にある浅茅湾(あそうわん)は、美しいリアス式海岸線で形作られている湾です。リアス式海岸とは、海岸が海水によって激しく浸食された、出入りの激しい複雑な様相を呈している海岸のことです。日本では、対馬の他にもあちこちで見られますが、浅茅湾のリアス式海岸は特に複雑で美しい景観となっています。
この絶景を眺めるにはいくつかの場所がありますが、その一つが金田城跡です。また観光船やシーカヤックに乗って海上から眺めることも可能です。
出典:ウィキペディア
浅茅湾は複雑な形状をしたリアス式海岸です。
©対馬観光物産協会
浅茅湾の絶景
©対馬観光物産協会
金田城跡から浅茅湾を展望
美しい自然が豊かな対馬には、人工的に作られた美しい景観もあります。「万関瀬戸(まんぜきせと)」は長さ500メートルに渡って延びる運河で、1900年、艦船を通すために旧日本海軍によって建設されました。もしこの運河がなかったら、本州側から出発した船が浅茅湾に停泊するためには、対馬の南部をぐるっと回って移動しなければならず、大変不便です。万関瀬戸のおかげで、この移動距離が短くなったというわけです。
運河の上には、「万関橋」が架けられています。初代の橋は運河と同じ1900年に作られましたが、現在の赤い橋は3代目。1996年に架けられたものです。美しい水が流れる万関瀬戸と優雅な形状の万関橋は、対馬の観光スポットにもなっています。橋のそばには休憩用に整備された「対馬万関憩いの広場」があります。ここに車を止めて、運河と橋の風景を楽しんでください。
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旧日本海軍によって築かれた運河「万関瀬戸」
©長崎県観光連盟
きれいな水が流れる万関瀬戸は観光スポットになっています。
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運河の上には赤い「万関橋」が架かっています。
阿連の洞門(あれのどうもん)は、対馬西海岸の阿連地区にあるトンネル状の岩のことです。自然にできたトンネルかと思いきや、実はこれ、石職人の田代さんという人がノミとツチだけで彫った洞門なのです!それにしてもなぜこんな所に洞門を作ったのでしょうか。
阿連の海岸沿いには洞門につながる小道がありますが、まだ洞門がなかったころ、隣の小茂田集落に行くときにはその小道を歩いた後、出っ張った岩場(現在洞門がある場所)に登りそこを越えて行かなければなりませんでした。この危険な行為を見かねた田代さんが、洞門を作りを始めたというわけです。
残念なことに田代さんは洞門の完成を見ないで亡くなってしまいましたが、この仕事は弟子の山崎さんに受け継がれ、1932年頃、見事完成しました。現在では洞門の中央部が没落して、2つに分かれた状態になっていますがまだ通ることができます。ただ、頭上の岩が落ちてくることもあるため、十分な注意が必要です。
「女連の立岩(うなつらのたていわ)」は対馬北西部の女連地区の海岸にある奇岩です。名前の通り、平べったい岩が海岸に立っています。その高さ、推測で12〜13メートル。海岸に大きな屏風が立っているように見えます。
立岩周辺の岩場は田んぼの畝が何本も並んだような形状をしています。立岩も含め、こうした岩は泥岩(でいがん)と呼ばれ、海底などに堆積した粘土が脱水し固まってできたものです。長い間に波や風によって変形し現在の形になったと考えられています。
女連の立岩のエリアはまだ観光用に整備されてはいません。それだけに自然のままの姿を観察することができ、感動的です。立岩近くまで行くには、海岸沿いに作られた歩道らしき小道の上を歩いて行きますが、途中で陥落しているところもあります。その場合は岩場に降りて歩行を続けます。幸いにも岩場の表面はざらざらしているので滑ることはありません。ただし、この歩行エリアは潮が満ちてくると海面下になってしまうので、干潮の時間を調べてから出かけてください。
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海岸に屏風のように立っている「女連の立岩」
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立岩の周辺には田んぼの畝が何本も並んだような形状が見られます。
南北に細長い島「対馬」の最南端、そこには2つの半島があります。「豆酘崎(つつざき)」は西側に位置する半島です。半島の先端は「尾崎山自然公園」になっていて遊歩道が整備され断崖の縁近くまで歩くと、遠くに広がる海の絶景を眺めることができます。また、自然公園内には休憩所やキャンプ場もあります。
この公園の高台には白い豆酘埼灯台が立っています。1987年に初めて点灯された比較的新しい灯台ですが、そこから海の方向を見ると、もう一つ灯台が見えます。これは1909年に初点灯された「旧豆酘埼灯台」です。今は新しい灯台ができたので、この古い灯台は「豆酘崎ミョー瀬照射灯」と改名され標柱として使われています。「ミョー瀬」とは岩礁の名前。この岩礁は近くを航行する船からは見えにくいため、難を避けるために建てられたのが旧豆酘埼灯台でした。
日本の中で朝鮮半島に最も近いところに位置する対馬では、複雑に入組んだリアス式の海岸線のある浅茅湾を初め、強い風や波の影響を受けて作られたユニークな地形を観察することができます。また、軍事的にも重要な拠点だった対馬には人工的に作られた運河や、石職人が築いた海岸のトンネルもあります。ぜひ出かけて絶景を見たり、ユニークな地形を探索したりしてみてください。
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対馬の最南端にある豆酘崎
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海の中に立つ「豆酘崎ミョー瀬照射灯」
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豆酘崎の尾崎山自然公園からは素晴らしい風景が展望できます。
写真提供:長崎県観光連盟、対馬観光物産協会ほか
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
掲載日:
2020/10/22
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
【浅茅湾(渡海船乗り場)】〒817-0322 長崎県対馬市美津島町鷄知
【万関瀬戸】 〒817-0324 長崎県対馬市美津島町久須保
【阿連の洞門】〒817-0241 長崎県対馬市厳原町阿連
【女連の立岩】〒817-1513 長崎県対馬市上県町女連
【豆酘崎】〒817-0154 長崎県対馬市厳原町豆酘