日本名水100選にも選ばれている「轟渓流」。諫早市高来(たかき)町の湯江(ゆえ)地区では、この豊富で美しい水を利用して「湯江紙」という和紙が生産されていました。最盛期には数百軒の紙漉(す)き小屋があり、海外に輸出されていたとも言われています。しかし、時代の波とともに機械を使った大量生産の安価な紙が主流になり、昭和46年にその歴史を終えました。消え去ったこの湯江紙を復活させ、地域おこしのために地元の有志が作り上げたのが「とどろき紙工房」です。
「とどろき紙工房」では、和紙を使ってうちわ作りやはがき作りを体験することができます。
日本名水100選の「轟渓流」。豊富で美しい水を利用して湯江紙が生産されていました。
湯江紙を復活させた「とどろき紙工房」
和紙の材料となる楮(こうぞ)
中村さん親子が挑戦するのはうちわ作り。指導していただくのは原口一成さんです。
舟(水槽)の中には楮(こうぞ)の皮を加工した材料が入っています。紙漉きに使うのは簾桁(すけた)。「簾桁を垂直に入れて体の方向に持って行ってください」と原口さん。お父さんが原口さんの動きを参考に簾桁を水槽に入れます。「繊維を均一にするように水を抜きながら揺するのがポイントですよ」というものの、なかなか難しい。お父さんが二度、三度と、簾桁を揺すります。
和紙のうちわ作りを指導するのは、原口一成さん。
紙漉きに使う簾桁です。
水槽の中に簾桁を入れて、和紙を漉きます。
簾桁を舟(水槽)から引き上げると、白いシート状の形がきれいにできています。これが和紙。水分をたっぷり含んだ和紙は、室内の光を受けて、キラキラ光っています。
上の桁を外し、うちわの骨を和紙の上に置きます。その上に、乾いた和紙を載せたら、色のついた紙を置いて飾り付け。圭吾くんもお手伝いします。
白い繊維の和紙が簾桁の上にできました。
うちわの骨をセットします。
色のついた紙を好きなように置きます。
飾り付けが終わったら、圭吾くんがお父さんと一緒にその上から溶かした糊をかけます。
さらに、水槽の中にもう一度簾桁を入れて終了。
後は、機械を使って水分を吸収させ、乾燥に入ります。この乾燥機は独特な形をしています。原口さんに聞くと、ステンレスの舟(水槽)を始め、ここにある設備はスタッフの皆さんが自分たちで作り上げたものだそうです。お父さんも感心することしきり。
15分ほどで和紙のうちわが乾燥します。
飾り付けしたら糊を上からかけます。
もう一度水槽に入れたうちわです。
脱水機で水分を吸収させた後、乾燥機で乾かします。
乾燥させたうちわの周りをハサミでチョキチョキと切ります。柄に近い部分をカッターで切り取り、剥がれやすい端にテープを貼って終了。オリジナルのマイうちわが完成しました。圭吾くんも、うちわを見て「キレイねー!」と声をあげます。
「とどろき紙工房」では、うちわ以外にもはがき、短冊作りなども体験できるそうです。
今回指導していただいた原口さん以外のスタッフも、皆さんボランティア。ただ、単に湯江紙を復活させるだけでなく、湯江紙が日常に使われるようになるために頑張ってらっしゃる姿に感動しました。
皆さんも、ぜひ、工房を訪れ、和紙づくり体験をどうぞ。
文・写真 中尾知徳
ハサミでうちわの周りの余分な部分を切ります。
オリジナルのうちわが完成。圭吾くんも大満足!
いろいろな和紙にふれることもできます。
掲載日:
2018/09/19
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
〒859-0125 長崎県諫早市高来町善住町1080番地