冒険県 冒険する長崎プロジェクト ワクワクを探しに出かけよう。

目的で探そう
冒険 482

「うちの郷土料理~次世代に伝えたい大切な味~」①~島原半島で郷土料理を食べてみよう!

ちゃんぽんに皿うどん、佐世保のレモンステーキや島原の具雑煮、五島のかんころ餅・・・など、「あそこに行ったら、あれを食べたいなー」と思い浮かべる料理があります。その土地でとれる食材で作られた、その土地ならではの「郷土料理」。
2013年にユネスコ無形文化遺産に「和食:日本人の伝統的な食文化」が登録され、世界的に和食が注目されています。しかし、その一方で、和食文化の保護や継承が課題にもなっています。そこで、全国各地の多様な食文化を次の世代に継承していく活動の一つとして、農林水産省がまとめたのが「うちの郷土料理」のウェブサイト。覗いてみると、各都道府県別に郷土料理が由来やレシピとともに紹介されています。

このうち、長崎県では30の郷土料理が選ばれました。それらの料理は、海に囲まれた長崎県ならではの海の幸を使ったものや、「坂のまち」ならではの山や丘陵地からの山の幸にも恵まれた地域性が見えてきます。さらに「島原の乱」など歴史的な背景、農村や漁村の厳しい生活から料理に工夫を凝らした先人たちの知恵が詰まっていることがよくわかります。

「冒険する長崎プロジェクト」では5回シリーズで、長崎県内各地の郷土料理を紹介していきます。ドライブを楽しみながら、それぞれの郷土料理を楽しんでみましょう!
1回目は、これからの季節、雲仙の霧氷が美しい島原半島に向かいます。

長崎市から車でおよそ1時間半。島原半島は、昔から農作物の生産とあわせて有明海や橘湾での漁業が盛んです。冬の雲仙岳は、緑に覆われた夏の「お山」とは一変して、少しキリっと厳しい印象。そんな中、雲仙温泉に小浜温泉、それに島原温泉と火山の恵みは冬こそ、楽しめるというもの。さらに豊かな食材を使った島原半島各地の郷土料理中でも、最も有名なのは「具雑煮」でさっそく温まりましょう。

ほかほかと湯気を立てて運ばれてきた具雑煮。一人仕立ての小鍋の蓋を開けると、ふわーっとだしの良い香り。具沢山の雑煮がとてもおいしそうです。
この具雑煮は、1637年に起きた歴史上の大きな事件、「島原の乱」が関係しています。江戸時代の初め(1637~1638年)、江戸幕府がキリシタンを弾圧したことに反発して起こった島原の乱では、総大将の天草四郎がおよそ3万7000人のキリスト教信徒とともに籠城、つまり、敵に周りを囲まれながらも城にこもって城を守る戦いを続けました。その際、お餅とともに山や海の幸をあわせて煮た「雑煮」で長い戦いに耐えたのが、「具雑煮」の始まりとされています。
今ではお正月やお祝いの時などに食べる料理で、家庭によって入れる具材は様々ですが、一般的には鶏肉や焼きアナゴ、白菜や人参・ゴボウなどの野菜に加えて、丸餅が入っているのが特徴です。

  • 農林水産省のWebサイト「うちの郷土料理」

  • ©(一社)長崎県観光連盟
    これからの季節は、霧氷が楽しみな雲仙

  • 島原の「具雑煮」
    出展元:農林水産省Webサイト「うちの郷土料理」
    画像提供元:(公社)長崎県栄養士会

素朴な味わいの麺料理、「六兵衛(ろくべえ)」もこの季節、そのあたたかさが嬉しい一品です。
ちょっと変わったこの名前の郷土料理も島原半島の歴史上のできごとがきっかけに生まれました。
それは、1792年に起きた大地震「島原大変(しまばら・たいへん)による津波。島原半島の海に近い地域は海水をかぶり、田畑が荒れたため、農作物がとれなくなりました。そこで、やせた土地でも育つさつまいもを食べて、何とか暮らしていたところ、深江村の六兵衛さんがさつまいもを粉にして、山芋の粉とあわせて、麺をうち、うどんのようにして食べるということを思いつきました。これにはみんな、大喜び。
その後も、おいしいさつまいもを作って、昔なつかしい素朴な郷土料理「六兵衛」として受け継がれるようになったそうです。

そして、「いぎりす」という、一見、イギリス??英語??と不思議な名前の料理も島原半島の郷土料理のひとつ。これは、外国のイギリスとは何の関係もなく、「いぎす」という海藻を使った料理なんです。
いぎす藻を使った料理は他の地方にもあるようですが、島原半島の「いぎりす」は愛媛県今治地方の「いぎす豆腐」がルーツだと言われています。
このいぎりすも、やっぱり歴史、「具雑煮」を生んだ島原の乱が関係します。
島原の乱の後、江戸幕府は、地域の復興のため四国から農民を移住させました。島原半島に面した有明海でも、瀬戸内海と同様、いぎす藻がとれることから、同じような料理を作りはじめます。乾燥させたいぎす藻を、寒天のように煮溶かし、別に甘辛く味を付けて炒め煮しておいた人参やしいたけ、小さく切った白身魚などの具材を加えて、流し固めます。
冠婚葬祭やお客さんがいらっしゃるときなどに、よく作って出された懐かしい郷土料理です。

  • ©株式会社島原観光ビューロー
    さつまいもから作った麺の「六兵衛」。素朴な味わいです

  • ©株式会社島原観光ビューロー
    外国の食べ物!?と思ってしまう「いぎりす」

  • ©株式会社島原観光ビューロー
    こちらも「いぎりす」。家庭によって、作る人によって、具材や味付けに違いが出るのも興味深い

最後に紹介するのは甘いスイーツ「かんざらし」。
元々は、江戸時代、小さく「くず」になった米を主食にしていた庶民が、くず米を粉にして作った団子を食べていたのが始まり。「六兵衛」が生まれるきっかけにもなった1792年の大地震「島原大変」で、大きな被害が出た一方、冷たくておいしい地下水があちこちから湧き出るようになりました。この湧水に、団子を入れて保存するようになり、さらに甘い蜜をかけて、今の「かんざらし」ができました。かんざらし、とは、米を一年で最も寒いころ、暦で言えば大寒のころに、臼で水挽きして、乾燥させていた作り方「寒ざらし」にちなむそうです。
冷たくて甘いかんざらし。夏の贅沢な一品ですが、具雑煮や六兵衛で温まった後、ひんやりデザートもまた、贅沢かもしれませんね。
冬の島原で、歴史に思いを馳せながら、郷土料理を楽しんでみてください。

  • ©出展元:農林水産省Webサイト「うちの郷土料理」
    画像提供元:(公社)長崎県栄養士会
    ひんやり甘い「かんざらし」

  • ©株式会社島原観光ビューロー
    冷たくておいしい「水」が、かんざらしには必要で大切

  • ©株式会社島原観光ビューロー
    島原半島の郷土料理は、島原の歴史や「水」が大きく関係するんですね

写真提供:(一社)長崎県観光連盟、株式会社島原観光ビューロー、農林水産省Webサイト「うちの郷土料理」/(公社)長崎県栄養士会
文:冒険する長崎事務局

掲載日: 2022/12/27
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。

インフォメーション

スポット名
島原半島
TEL
住所

※お出かけの際には事前に位置をお調べすることをお勧めいたします。
駐車場情報
営業時間
定休日
対象年齢
料金
アクセス
公式サイト
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/area/nagasaki.html
シェアする
facebook line

アクティビティタグ

こちらもオススメ