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冒険 417

諫早・小野用水を源流から歩いて、めぐってみよう!

島原鉄道の本諫早駅から諫早駅方面へ向かっていくと、諫早市体育館のあたりで「疏水(そすい)百選小野用水」という立て札が目に入ります。疏水百選って何?小野用水って?疑問を持った私は、「疏水(そすい)百選」(農林水産省などが選定)のひとつで、諫早を流れる「小野用水」を調べてみることにしました。

あまり馴染みのない「疎水(そすい)」という言葉ですが、疎水(用水)とは灌漑(かんがい)や舟運のために、新たに土地を切り開いて水路を設け、通水させることをいい、灌漑とは河川などから水を引き、田や畑へ水を吸水することを指すそうです。

この小野用水は、今から200年ほど前の江戸時代に、当時の諫早藩主・青木弥惣右衛門(あおきやそうえもん)の指揮で農業用水として、本明川から水を引き作られました。眼鏡橋の近くに看板を見つけて読んでみると、「小野用水は当時画期的な技術であった『逆サイフォン』式の底井樋(そこいび)廻水(かんすい)であった」と書かれていました。

  • 立て札が立っている場所は、島原鉄道本諫早駅の近くです

  • 写真の真ん中にある立て札に「疏水百選小野用水」の文字を見つけました

  • 眼鏡橋のそばに、小野用水についての詳しい説明板があります

小野用水の長さは約8.5キロで、途中から2手に分かれて諫早市内を流れています。
この2つの経路を2日に分けて歩いて巡りました。

まずは用水の源流になっている本明川の山下渕に行ってみます。山下渕は眼鏡橋からすぐ横を流れる本明川を上流に向かって1分ほど歩いた所にあります。川が段差になっている場所が見えたら、そのすぐ上のあたりです。

山下渕手前の段差の下で、水を受け止めているのは「公園堰(こうえんせき)」という設備です。小野用水に流れる水はこの公園堰から取水されています。この公園堰は、1957年(昭和3)の諫早大水害のあと、取水堰の機能をもった「床止め」として改築されました。床止めとは、河床の洗堀を防いで河川の形状を維持するための設備です。

山下渕から流れる水を辿ると、50メートルぐらいの水路が東に向かって延びています。この水路が小野用水のはじまり。用水は諫早藩の屋敷跡を囲む緑豊かな散策路「高城回廊」の横を静かに流れていきます。高城回廊の脇を抜けると、水の流れは諫早図書館のある通りへ出て、島原鉄道沿いに向かいます。

  • 小野用水の出発点「山下渕」

  • 高城回廊は緑豊かで、散歩にぴったりな道です

  • 蔦が巻きついた橋の上から用水を眺めると、どこか懐かしい気持ちになります

小野用水の流れを追って、アエル商店街の手前の小道に入っていきます。
商店街の賑わいから離れ、閑静な住宅地に用水のトポトポトポという耳に心地よい音が響きます。
その音を楽しみながら、用水をどんどんたどっていきます。

この日は快晴。空の青が、水面にくっきりと写り込んでとても美しい景色が目の前に広がっています。
よく知っていると思っていた諫早の街ですが、ちょっと小道に入ると知らないお店や見たことのない不思議なものが見つかります。
水路沿いの道の脇では恵比寿像をたくさん見かけました。七福神の中で商売繁盛の神様として知られる、あの恵比寿様です。この「小さな旅」の中だけでも5体の恵比寿像に出会うことができました。諫早にはいったい何人の恵比寿様がいるのでしょうか。諫早で恵比寿様を探す冒険もまた楽しいかもしれません。

途中、私有地などで立ち入れない場所もあり、何度か水路を見失いかけましたが 、あらかじめチェックしておいた説明板の地図を頼りにその行く先を追っていくと、急に大きな道路に出ました。
今まで住宅だった街並みが一変して、目の前に一面の田んぼが広がります。
光り輝く緑のじゅうたんに、ザァッという稲のゆれる音。
人々の生活感が感じられた住宅地から、一気に広大な水田に景色が変わることに新鮮な驚きと感動を覚えました。
この田んぼをまっすぐ行って、少し高くなった場所に突き当たった場所で終点です。

  • 諫早の商店街「アエル商店街」 の脇にも用水が流れています

  • 静かな住宅地に澄んだ水音が響きます

  • 田んぼ沿いにまっすぐ伸びる用水

小野用水の流れをたどり、水音の心地よさや水田の爽快感が心に残っていた私は別の日、もうひとつの流れもたどってみることにしました。

高城回廊を抜け、今度は市役所の表を通りアーケードの方へと用水を追っていきます。
諫早郵便局の向かい側に、サイクリングロードの入り口があります。用水はこの道のそばを流れています。
サイクリングロードを歩いていると、水をせき止めるための水門をいくつも目にしました。

その光景が珍しくて撮影をしていると、近くの家から男性が出てきました。「何を撮っとるとですか?」
やばい!怒られる!一瞬緊張が走りましたが、私が「川を撮ってるんです…水門とか!」と返すと、
男性はにこっと笑って「おいも時々開け閉めしよるとよ」と、その男性が水門の開閉作業をしていると教えてくれました。
諫早は低地なので、洪水で水かさが増した時に昔から小さい川や水路への逆流を防ぐために、水をせき止める「門」が作られています。
小野用水にもいくつもの樋門(ひもん)があり、こうして管理してくれることで地域が水害から守られているのですね。

日々の安全な暮らしを支えてくださる方のあたたかさに触れ、嬉しい気持ちになり、長い道のりを歩く足も軽くなった気がします。

  • アエル商店街を横切る用水

  • 色づいた木の葉が川に散って美しい

  • いたるところに樋門・樋管がありました

さらに進んでいくと、先日訪れた田んぼを挟んで北側に出ましたが、その先は川が横切り歩道も水路も途切れていました。
先日見た説明板の地図と照らし合わせてみると、どうやらここが「底井樋(そこいび)」のある場所のようです。
底井樋とは、川の底を横断するように作られた用水路のこと。
この辺り田井原地区で半造川の底に潜った用水が、再び地上に出る小野地区まで電車に乗って移動することにしました。

水田のある場所から歩いて10分ほどの島原鉄道「幸駅」から島原方面の電車に乗り「干拓の里駅」で下車。駅から北へ約1キロ歩くと、「干拓の里」の向かい側で水田のそばを流れる用水の続きを見つけることができます。そこから地図に示してある終点まで、額を流れる汗と涼しい風を肌に感じながら、農道を20分ほど歩き切りました。

小野用水には今回めぐった2つの流れがあります。
時間や体力に合わせて好みの経路をひとつ選んでみてもいいかもしれません。

今回、用水をめぐることで、日常生活でただの川だと思ってそばを歩いていた水の流れが、実は誰かの生活の要になっていると知ることができました。そして、その日常の陰には地域を守っている人々の努力の積み重ねがあることも・・・。普段見過ごしているものにもひとつひとつ意味があって、深く調べてみると新しい発見や驚きに満ちているのだと思うと、見慣れた景色がいままでより特別に感じられます。

皆さんも、いつも生活している場所を振り返り、「そういえば、これ何だろう?」と思ったらぜひ、調べてみてください!そこから「冒険」が始まります!

  • 用水の到着地点は干拓の里の近く

  • 小野地区の田んぼではたくさんの電柱とバーチカルパイプが見られました

  • 諫早の自然風景でよく見かける鷺(サギ)ですが、なかなか近くで撮影ができません

文・写真:木端みの
長崎県諫早市在住のフリーライター・イラストレーター。
諫早のマスコットキャラ・うないさん推しで、うないさんと一緒に写った写真を大切にとっています!

掲載日: 2021/10/22
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。

インフォメーション

スポット名
小野用水
TEL
-
住所
長崎県諫早市

長崎県諫早市

※お出かけの際には事前に位置をお調べすることをお勧めいたします。
駐車場情報
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営業時間
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定休日
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対象年齢
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料金
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アクセス
(スタート地点)
島原鉄道本諫早駅から徒歩5分。
JR諫早駅から車で5分。
公式サイト

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