長崎の街中をゴトゴトと走る路面電車。この路面電車は「長崎電気軌道」という民間の会社が運行しています。
1915年(大正4)11月に開業して、100年以上長崎の街を走り続けています。全5路線11.5キロ。現在72両もの車両が活躍中です。
よく見ていると、新しい車両から昔ながらの車両まで、色々な車両が走っています。いったいどのくらい種類の車両が走っているのか?気になりますよね?それでは色々な車両を乗り比べながら、路面電車について調べてみましょう。
長崎駅前電停にて。次から次へと電車が来ます
交差点を90度曲がる電車(市民会館電停近く)
「長崎路面電車資料館」(長崎市川口町)には、これまでの車両の歴史が分かるボードがあります
-昭和50年代~平成に誕生した車両たち-
まず、ちょうど電停にやってきた「1800形」に子どもたちと乗ってみました。たくさんの人が乗車した時に、車両の後ろだけが詰まらないように、乗車口が車体の中央にあります。
1000番台を名乗る車両は1982年(昭和57)~2000年(平成12)にデビューした車両です。老朽化した車両を置き換えるため順次、導入されました。現在、1200形、1300形、1500形、1700形、1800形の5形式・計22両が活躍中。台車など足回りは従来の車両や廃止となった西鉄北九州線の電車の部品を流用していますが、新造された車体は角ばった箱型で近代的なイメージ。広告をまとった車両以外は、クリーム色にエンジ色を配したデザインとなっています。
「パパ、前に行ってもいい?」と息子が尋ねます。1000番台の車両は、前面の大きな一枚窓が特徴。運転台の後から、前方の景色が楽しめます。車で混雑する通りでも、すいすいとすり抜けて走る路面電車。流れゆく車窓の景色に大人も子どももワクワクしますね。
車内の座席はロングシートで統一されています。側面の窓も大きく、車内が明るいです。
「あっ、こんなところにボタンがある。降りるとき押してもいい?」
窓枠以外にも座席の背もたれ部分に降車ボタンがあります。車両のリニューアルの際、お客様の利便性を考えて、降車ボタンや握り棒は増設されたそうです。車両も時代にあわせて成長していくのですね。
1800形。平成生まれの近代的なデザイン
降車ボタンが背もたれのところにもあるのでボクにも押せるよ
1500形は、大きな窓が特徴的
-昭和20年代~昭和40年代に誕生した車両たち-
「うわぁ、昔の電車が来た!」
次に乗ったのは300形。「ベテラン車両」の姿に子どもたちは大喜びです。
「パパ、この車両は椅子が長いね」
乗降口が車両の端にあるため、車内に入ると長いロングシートが目立ちます。この300形をはじめ、200、300、500番台を名乗る車両は1950年(昭和25)~1966年(昭和41)の間に導入された車両です。それまで走っていた木造製の古い車両に代わって、鋼鉄を使った強くて大きな車両として導入されました。その後リニューアルを繰り返し、今でも元気に走っています。現在、201/202形、211形、300形、360形、370形、500形の6形式・計41両が活躍中。広告をまとった車両以外は、車体上部がクリーム色に下部が深緑色のツートンになっていて、今や長崎の路面電車の象徴するカラーです。
「パパ、凄い音がするよ!」
走り出すと、昔ながらの走行音。今や全国でも数少なくなった「吊りかけ式」と呼ばれる電車の駆動方式。信号で停まっていると、床下から「ゴトゴトゴト…」と大きな音がして、まるで生き物のようです。
「こっちにはたくさん機械があるよ」
後方の運転台をのぞいて見ると、年季の入った機器でいっぱい。長年使われていても、手入れが行き届いているのでピカピカです。60年以上走り続ける貴重な車両。いつまでも元気で走ってほしいですね。
300形。クリーム色と深緑のツートンカラー
年季の入った300形の運転台
大きなモーター音とガタゴト揺れる電車、楽しいね
-最新鋭の車両たち-
次は5000形に乗車します。この5000形と3000形はそれぞれ3両、計6両が活躍中。3000形は2004年(平成16)、5000形は2011年(平成23)にデビューしました。
「長いし、車内が広いよ、この電車!」
これらの車両の特徴は車体が3つ繋がった「連接車両」。従来の車両は全長約11メートルですが、15~16メートルと長くなりました。
そしてもう一つは「低床車両」。停留所の高さと車両の高さが一緒で、乗る時にステップがなく、お年寄りはもちろん、車椅子やベビーカーで利用される方にも優しい車両です。床下から天井までの高さもあるので、車内は広々とした印象。
座席の形も色々あります。中でも運転席の後ろの席は前方の景色が楽しめる特等席。子どもたちには大人気です。
「パパ、この電車、静かだね。」
最新のモーターは消費電力が抑えられ、かつ音も小さくなっています。走行時の揺れも抑えられていて、乗り心地も快適な車両です。従来の車両とは大きく異なり、人にも地球にも優しい「未来にふさわしい」車両ですね。
5000形。長い車体が目立ちます
3000形の広い車内
ステップがない低床車両
-見られたらラッキー?レアな車両たち-
長崎の路面電車にはレアでユニークな車両たちも存在します。
まずは310号の「みなと」。
JR九州の車両を手がけている水戸岡鋭治氏がデザインした車両で300形を改造した車両。外装は一際目立つメタリックブルー。車内は木の椅子を使うなど、お洒落な内装になっています。観光客はもちろん、地元の方にも人気です。
次は207号の「あかり」。
赤と黒の目立つ外装で、車内はレストランのようにテーブルと椅子が配置されています。以前は「ビール電車」として活躍していた201形をリニューアルし、2020年1月にイベント用の車両として登場しました。
他には、元西鉄福岡市内線で活躍していたレトロな車両・168号や、元熊本市電だった601号も走ることがあります。
また、お客さんが乗ることはできませんが、「花電車」として走る87形もあります。前面は長崎電気軌道のキャラクター「ながにゃん」を模した塗装が施されていて、愛らしいですね。夏には「散水車」としても活躍します。
長崎の路面電車の車両はそれぞれ歴史や特徴もあり、レアな車両も走っていますね。走っているのを見るだけでも楽しいし、機会があれば、色々な種類の車両に乗って違いを感じるのも面白いですよ。
©長崎電気軌道株式会社
「みなと」号(右)と「あかり」号(左)
©長崎電気軌道株式会社
街中を走る「みなと」号
散水車として活躍する87形。「ながにゃん」が目印
写真提供:長崎電気軌道株式会社
文:吉田 行徳
福岡出身ですが親戚が長崎にいるため、幼少の頃から度々長崎を訪れていました。今でも帰省の折には長崎を訪れ、観光やグルメを楽しんでいます。これからも長崎の「ワクワク」できるスポットを探しに出かけます。
掲載日:
2021/10/12
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
〒852-8134 長崎市大橋町4番5号 長崎電気軌道株式会社