長崎県・五島列島の南部を占める新上五島町。たくさんの島から成っていますが、その中で一番大きな島が中通島(なかどおりじま)です。今回は南部の奈良尾港からスタートし、北部に移動するコースを紹介します。いったいどんなものに会えるのかな?さっそく中通島の探索に出かけてみましょう!
奈良尾港は中通島の南の玄関口です。この港へは長崎港から直通のフェリーが出ていて、また五島市の各港にも船が運行しています。港の周辺に広がる町の一角には奈良尾神社があり、そこでは国の天然記念物に指定されている「あこう樹」を見ることができます。高さ25メートル、幹回り12メートルという巨大なこの木は、推定樹齢が650年以上。根っこのところが二股に分かれ、まるで両足で地面に踏ん張っているように見えます。そしてこの二股が神社の参道の上にトンネルのようになってまたいでいるのです。この根っこのトンネルをくぐると長生きできると伝えられています。ぜひくぐってみましょう!
©長崎県観光連盟
中通島の南部にある奈良尾港
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奈良尾神社にあるあこう樹は推定樹齢が650年以上。国の天然記念物に指定されています。
あこう樹の根っこの部分はトンネルのようになっています。
奈良尾港から車で北に5〜10分ほど行くと高井旅海水浴場に着きます。白浜と透き通った青い海が魅惑的なこの海水浴場では、海水浴だけでなく、サーフィンなどマリンスポーツを楽しむこともできます。近くにはログハウスやコテージ、またテニスコートもあり、宿泊しながらゆっくりした時間を過ごすこともできます。
海水浴場の山側の高台には教会があります。赤い屋根と白い壁が特徴の美しい教会です。このエリアでは1939年に、100人以上の人がカトリック信者になったと言われています。その後、1961年にこの教会が建てられました。
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きれいな砂浜と透き通るような青い海の高井旅海水浴場
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海水浴場の資格にはログハウスやコテージがあり宿泊することもできます。
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赤い屋根と白い壁が特徴の高井旅教会
次は中通島の北東部にある有川港周辺に移動しましょう。
2004年に完成した有川港ターミナルには、鯨の博物館「鯨賓館ミュージアム」やコンサートなどのイベントが開催される「鯨賓館ホール」が併設されています。新上五島町は昔捕鯨業が盛んな所でした。ミュージアムには、捕鯨業の歴史資料や捕鯨に使われた道具などが展示されています。また10分の1に縮小された鯨の模型やセミクジラのひげなども見ることができます。
有川港ターミナルでもう一つ見逃せないのが「佐田の山」の銅像です。佐田の山は有川地区出身で1960年代に活躍した元横綱です。鯨賓館ミュージアムでは、佐田の山が獲得したトロフィーや関連の品も紹介されています。
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有川港ターミナルに併設された鯨賓館ミュージアム
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ミュージアムには鯨の模型などが展示されています。
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ターミナルの一角にたてられた、元横綱・佐田の山の銅像
海童(かいどう)神社は、有川港ターミナルのすぐ東側にある神社です。この神社のが建っている場所は、昔「応護島(おこじま)」という小島だったのですが、港ターミナルが作られるときに周辺が埋め立てられ陸続きになりました。そのため、この神社は島の名前をとって別名「オコジマ様」とも呼ばれています。
海童神社には他の神社では見られない特徴があります。それはナガスクジラのあごの骨が鳥居として使われていることです。昔捕鯨業で栄えたこのエリアの特徴を良く表していますね。
この鯨の骨の鳥居は、一般的な鳥居の後ろに建てられています。以前は、その他にもあと2つ、骨やひれでできた鳥居があったのですが、腐食してしまい、今は1つだけになってしまいました。鳥居の高さは4.45メートル、地下に埋め込んだ部分が75センチありますから、全長5.2メートルという大きなもの。捕獲したナガスクジラの体調が18.2メートルだったそうですから、あごの骨が大きいことも納得できますね。
それにしても「海童」は珍しい名前だと思いませんか。長崎県に残っている資料によると、1617年6月17日に、子供や大人が海でおぼれて亡くなり、その後2年間も同じ日に同じことが起こったため、そうした人々の霊を慰めるために海の神様・海童神をまつるこの神社が建てられたと言われています。現在、毎年7月の第4日曜日には「十七日祭り」が開かれ奉納の行事が行われます。
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有川港ターミナルの東側にある「海童神社」
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ナガスクジラのあごの骨で作った鳥居は、高さが4メートル以上あります。
有川港から北に向かって進むと、「矢堅目公園(やがためこうえん)」に着きます。リアス式の海岸線が美しいエリアで、先端にあるごつごつとしたユニークな形をした大岩は、ジブリアニメの人気キャラクター「トトロ」に見えると話題になっています。公園内には展望所があり、そこから東シナ海の雄大な風景を眺めることができます。
このエリアは、昔、奈摩湾に侵入してくる敵を見張るための要塞だったため、矢で守る(堅める)という意味から、「矢堅目」の名前がついたと言われています。
公園の観光と併せて訪ねたいのが、「矢堅目の塩工房」です。ここでは塩の精製作業を見学することができます。また、その隣にある物産館「矢堅目の駅」では、矢堅目産の塩を使った「塩ソフトクリーム」が販売されていて人気を呼んでいます。
中通島観光の最後のスポットは、奈摩湾を挟んで矢堅目の対岸にある白草公園です。天気の良い夕暮れ時には、この公園から夕焼け空をバックにした矢堅目の「トトロ岩」の美しいシルエットを見ることができます。時間があったらぜひ訪ねてみてください。
中通島の観光スポットいかがでしたか。樹齢650年以上もある巨大あこう樹や鯨の博物館、そしてクジラの骨で作った鳥居のある神社やトトロに似た大岩など、この島には興味深いものがあることがわかりましたね。ぜひ計画して探索に出かけてみてください!
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「トトロ岩」の愛称もある矢堅目公園の大岩
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矢堅目の駅では、地元の物産品として塩ソフトクリームが販売されています。
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奈摩湾を挟んだ対岸の白草公園から見える夕日とトトロ岩
写真提供:長崎県観光連盟ほか
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
掲載日:
2020/07/27
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
【奈良尾神社】〒853-3101 長崎県南松浦郡新上五島町奈良尾郷333番地
【高井旅海水浴場】〒853-3101 長崎県南松浦郡新上五島町奈良尾郷字高井旅
【高井旅教会】〒853-3101 長崎県南松浦郡新上五島町奈良尾郷953-3
【鯨賓館ミュージアム】〒857-4211 南松浦郡新上五島町有川郷578-36 有川港ターミナル1F
【海童神社】〒857-4211 長崎県南松浦郡新上五島町有川郷
【矢堅目公園】〒857-4401 長崎県南松浦郡新上五島町奈摩郷矢堅目