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冒険 267

語り継ぐべき場所…。川棚町の戦時遺構を訪ねて平和を祈祷しよう!

大村湾の北側に面する川棚町には、戦時中、海軍の重要な軍事施設が作られました。町の中には、その頃に使われた建造物が今でもいくつか当時の面影をたたえながら残っています。そんな戦時遺構を訪ね、戦争の恐ろしさを学び、改めて平和を祈祷しましょう!

まずJR川棚駅のすぐ南側にある「川棚海軍工廠(こうしょう)跡」を訪ねましょう。といっても今では工場や民家などが建ち当時の面影はほとんど残っていませんが、赤レンガの建物が2棟残っています。川棚海軍工廠では戦争中主に航空魚雷の部品を製造していました。航空魚雷とは飛行機から投下できるように作られた魚雷のことです。赤レンガの建物は、現在は屋根がはずされて、朽ちかけていますが、そうした部品などの倉庫として使われたのです。

このエリアから北に4キロメートルほど行くと「川棚海軍疎開工廠跡」があります。ここには戦争がだんだん激しくなった時に、先に紹介した海軍工廠への爆撃を避けるために代わりに作られたトンネル型の工場や、魚雷の主要部品を製造・格納していたとされている半耐爆型建造物が残っています。

  • ©川棚町産業振興課
    川棚海軍工廠跡に唯一残る赤レンガの倉庫

  • ©川棚町産業振興課
    激しくなった爆撃を避けるために作られたトンネル工場

  • ©川棚町産業振興課
    半耐爆型建造物では魚雷の主要部品を製造・格納していました。

「城山公園」はJR川棚駅のすぐ北側にある公園です。最初に紹介した川棚海軍工廠跡を見下ろすような位置にあるので「工廠の見える丘公園」とも呼ばれています。川棚町の悲しい戦争の記憶を忘れないようにという思いを込めて、公園内には「慰霊之塔」や「歴史と平和の塔」が建てられています。

  • ©長崎県観光連盟
    城山公園に建てられた「慰霊之塔」

  • ©川棚町産業振興課
    公園内にある「歴史と平和の塔」は恐ろしい戦争を繰り返さないようにという願いを込めて建てられました。

川棚川を挟んで城山公園の反対側にあるのが「川棚町郷土資料館」です。1984年に開館したこの資料館には地元の生活道具などと併せて、戦時遺構に関する資料が数多く展示されています。
ただ、2020年5月の時点で、町役場の庁舎が建て替えられており、この資料館が仮庁舎として使われています。そのため資料館としての機能は停止していますが、2021年9月には新しい町役場が完成する予定で、その後に資料館の再開が予定されています。
展示物の一つに特攻艇「震洋(しんよう)」の実物大の模型があります。これは、爆薬とエンジンを付けたボートに隊員が乗り込み、夜間、敵の船にボートごと体当たりして攻撃するものでした。このボートに乗り込んだ隊員たちは生きて帰ることはできませんでした。
現在(2020年5月)、この模型を展示する施設を新たに建設するプロジェクトが進行中です。

  • ©長崎県観光連盟
    川棚町郷土資料館

  • ©川棚町産業振興課
    資料館には地元で使われた生活用具などと並んで戦時遺構の資料が展示されています。

  • ©川棚町産業振興課
    特攻艇「震洋(しんよう)」の実物大の模型

川棚町の南部、大村半島の東側の海に浮かんでいた片島は、1942年に海峡が埋め立てられ陸続きとなった島です。なぜ海峡を埋め立てたのでしょうか。当時、戦争に使う魚雷を発射実験するための施設を建設する必要があり、片島付近の海は波が穏やかで深かったために建設場所として選ばれたのでした。
埋め立て後、島には魚雷発射試験場の本部が作られました。その建物は屋根がなくなった状態で遺構として残っています。そして島から少し離れた海の中に作られたのが魚雷発射試験場と観測所です。今では海に浮かぶ廃墟として当時の面影を残しています。

  • ©長崎県観光連盟
    海峡が埋め立てられ陸続きになった片島は魚雷発射試験場として開発されました。

  • ©長崎県観光連盟
    魚雷発射試験場本部跡

  • ©長崎県観光連盟
    魚雷発射試験場跡

川棚町の西部海岸近くには川棚魚雷艇訓練所跡が残っています。この訓練所は、特攻艇「震洋」や魚雷「回天」などの要員を訓練する所でした。ここでは多くの特攻隊員が訓練を受け、その内3511名の尊い命が戦争で奪われました。この敷地内にはそうした人々の冥福を祈ると同時に、二度と戦争をしないようにという思いを込めて「特攻殉国の碑」が建てられています。

大村湾の北側に面する川棚町。この静かな漁村の町に、生きて帰ることのなかった人々の悲しい戦争の歴史が残っているのは、意外な気がするかもしれません。ぜひ今回紹介した戦時遺構を訪ね、改めて、戦争のない平和のありがたさを再認識してください。なお、戦時遺構を訪ねるには町が発行している「散策ガイドマップ」を使うと便利です。

  • ©長崎県観光連盟
    川棚魚雷艇訓練所跡

  • ©長崎県観光連盟
    特攻隊員として亡くなった人々の霊を祀り、平和を願う「特攻殉国の碑」

写真提供:長崎県観光連盟
川棚町産業振興課
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。

掲載日: 2020/05/29
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。

インフォメーション

スポット名
川棚海軍工廠跡 / トンネル工場跡 / 半耐爆型建造物 / 城山公園 / 川棚町郷土資料館 / 魚雷発射試験場跡 / 特攻殉国の碑
TEL
0956-76-8335(川棚町商工観光係)、0956-82-2064(川棚町教育委員会)
住所
【川棚海軍工廠跡】〒859-3605長崎県東彼杵郡川棚町百津郷
【トンネル工場跡】〒859-3604長崎県東彼杵郡川棚町石木郷
【半耐爆型建造物】〒859-3604長崎県東彼杵郡川棚町石木郷
【城山公園】〒859-3607長崎県東彼杵郡川棚町城山650
【川棚町郷土資料館】〒859-3614 東彼杵郡川棚町中組郷1506 総合文化センター
【魚雷発射試験場跡】〒859-3617 長崎県東彼杵郡川棚町三越郷
【特攻殉国の碑】〒859-3619 長崎県川棚町東彼杵郡新谷郷

【川棚海軍工廠跡】〒859-3605長崎県東彼杵郡川棚町百津郷

【トンネル工場跡】〒859-3604長崎県東彼杵郡川棚町石木郷

【半耐爆型建造物】〒859-3604長崎県東彼杵郡川棚町石木郷

【城山公園】〒859-3607長崎県東彼杵郡川棚町城山650

【川棚町郷土資料館】〒859-3614 東彼杵郡川棚町中組郷1506 総合文化センター

【魚雷発射試験場跡】〒859-3617 長崎県東彼杵郡川棚町三越郷

【特攻殉国の碑】〒859-3619 長崎県川棚町東彼杵郡新谷郷

※お出かけの際には事前に位置をお調べすることをお勧めいたします。
駐車場情報
【城山公園】20台
【川棚町郷土資料館】20台、車椅子用駐車場2台
営業時間
【川棚町郷土資料館】8:30~17:00 
※現在は川棚町庁舎として使用中 
※入場希望者は教育委員会事務所に要連絡
定休日
【川棚町郷土資料館】年末年始(12月28日~1月3日)
対象年齢
全年齢
料金
無料
アクセス
【川棚海軍工廠跡】JR川棚駅から徒歩で約5分
【トンネル工場跡】JR川棚駅から車で約7分
【半耐爆型建造物】JR川棚駅から車で約7分
【城山公園】JR川棚駅から徒歩で約10分
【川棚町郷土資料館】JR川棚駅から徒歩で約10分
【魚雷発射試験場】JR川棚駅から車で約10分
【特攻殉国の碑】JR川棚駅から車で約15分
公式サイト
川棚海軍工廠跡 http://www.kawatana.jp/kankou/2010/12/post-23.html
トンネル工場跡・半耐爆型建造物 https://www.kawatana.jp/kankou/entry-img/wartime-ruins_01.pdf
城山公園 http://www.kawatana.jp/kankou/2010/12/post-25.html
川棚町郷土資料館 https://nagasaki-bunkanet.jp/institution/%E5%B7%9D%E6%A3%9A%E7%94%BA%E9%83%B7%E5%9C%9F%E8%B3%87%E6%96%99%E9%A4%A8/
魚雷発射試験場跡 https://www.nagasaki-tabinet.com/guide/465/
特攻殉国の碑 https://www.nagasaki-tabinet.com/guide/466/
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