大衆用の食器として利用されることの多い「波佐見焼(はさみやき)」は、長崎県の波佐見町で生産される陶磁器。400年の陶芸の歴史を持つ波佐見町には、陶芸のことがよくわかる交流センターや広場、また陶郷や伝習館などがあり、ゴールデンウィークには陶器まつりが開かれます。では早速出かけて、波佐見焼の陶芸を見学してみましょう!
波佐見焼は、江戸時代の初めごろ、この地方を収めていた藩主大村氏が朝鮮半島を訪問し帰国するときに、一人の陶工を日本に連れて帰ったことから始まったと言われています。
元々の波佐見焼きには、白地に青い色の模様の入った「染付」と薄い青緑色に焼き上げる「青磁」という2つの技法がありました。この2つの技法の内、青磁は長い間にあまり使われなくなっていたのですが、最近になって復活させようという動きがあります。美しい青磁の波佐見焼をぜひ見たいものですね。
現在では、その他オレンジ色に色を付けた食器など、モダンなデザインの食器も生産されています。各家庭にはきっと波佐見焼の陶磁器がいくつか使われていると思います。改めて調べてみると新しい発見があるかもしれません。
©長崎県観光連盟
波佐見焼の陶磁器には染付と青磁があります。
白地に青の模様の入った波佐見焼きのお皿
赤い色を入れた器もあります。
波佐見町にある陶芸の館「観光交流センター」は波佐見焼観光の中心となっている施設。さまざまな波佐見焼の器や地元の特産品を販売しています。また「暮らしのアトリエ」コーナーではモダンな波佐見焼を展示しています。その他、1階の「くらわん館」では、ろくろ、手びねり、絵付けなどの陶芸体験ができます。参加するには1週間前までに予約を入れる必要があります。また2階には資料室があって、波佐見焼のことをもっと詳しく知ることができます。
観光交流センターの隣には「やきもの公園」があります。ここには「世界の窯広場」が作られていて、日本を初め朝鮮、イギリス、中近東など世界各地で使われているちょっと変わった窯が12基再現されています。世界でもあまりお目にかかれない珍しい展示広場です。
©長崎県観光連盟
波佐見町陶芸の館「観光交流センター」
©長崎県観光連盟
陶芸の館ではいろいろな波佐見焼の陶磁器が展示販売され、陶芸の体験もできます。
©長崎県観光連盟
やきもの公園の野外博物館「世界の窯広場」では世界各地の窯に出会えます。
波佐見焼を知る上で見逃せないのが、実際に波佐見焼の陶磁器を作っている「中尾山」エリアの見学です。波佐見焼きのふるさとでもある中尾山は「陶郷」と呼ばれ、現在でもたくさんの窯元が生産を続けています。実際に窯元のいくつかを訪れてその作業風景を見学することができます。ただ、個人で行くと窯元の都合もあり見られない場合もあるので、一般公開される4月の「桜陶祭」や10月下旬の「秋陶めぐり」に合わせて訪ねるか、ガイドについてもらって回るのがおすすめです。
また中尾山の高見から町を見渡すと、町のシンボル、レンガ造りの煙突のある風景が見えます。そして町の中を歩くと、陶板をはめ込んで作った塀や素焼きの陶磁器が並んだ光景に出会うことができます。
©長崎県観光連盟
波佐見町の陶芸のふるさと「中尾山」の風景。たくさんの窯元があり今でも陶磁器を生産しています。
©長崎県観光連盟
中尾山ではレンガ造りの煙突がシンボルになっています。
©長崎県観光連盟
小さな陶板をはめ込んで作った塀
中尾山には「伝習館」があります。ここでは手びねりや絵付けなどの陶芸体験ができます。また宿泊施設もあるので、滞在しながらゆっくり波佐見焼の作陶を楽しむこともできるんですよ。
波佐見町には現在使われている窯も多くありますが、その一方で今では使われなくなった窯も残っています。その代表的なのが「智恵治登窯(ちえじのぼりがま)」と「畑ノ原窯(はたのはらかま)」です。
智恵治登窯は1907年に作られたものですが今の形になったのは1935年です。幅6メートル、奥行き4.7メートル、高さ2.7メートルという大きな窯。5つあった窯室は2つが取り壊され、今は3つだけが残っています。2004年に県の史跡に指定されています。
畑ノ原窯は、1599年に朝鮮から移住してきた李祐慶によって築かれたもので、磁器窯としては日本で最も古い窯です。元々の窯は残っていませんが、復元された窯を見ることができます。畑ノ原窯跡は2000年に国の史跡に指定されました。
©長崎県観光連盟
陶郷の里中尾山にある「伝習館」
©長崎県観光連盟
智惠治登窯跡は規模が大きく、5つあった窯室のうち3つが残っています。
©長崎県観光連盟
朝鮮から日本に渡った陶芸家が築いた畑ノ原窯の跡
「波佐見陶器まつり」は毎年ゴールデンウィークの時に、やきもの公園で開かれるイベントです。会場には、雨が降っても大丈夫なように大テントが張られ、130もの窯元や商社が出店します。それだけ数多くの陶磁器が会場に並ぶので、気に入ったものも見つけやすくなります。会場では陶磁器の販売の他、ろくろ、鋳込み、絵付けなどの陶芸体験ができます。波佐見陶器まつりは、波佐見町の大きなイベントの一つです。
400年という長い歴史を持つ波佐見焼について、展示販売や陶芸体験のできる場所、また実際に陶磁器を生産している陶郷中尾山、そしてたくさんの陶磁器が並ぶ陶器まつりなど、詳しい内容をお伝えしました。長崎県の名産品の一つである波佐見焼の生産地波佐見町を訪ねて、すてきな陶磁器を手にしてみましょう!
写真提供:長崎県観光連盟ほか
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
©長崎県観光連盟
波佐見陶器まつりは毎年ゴールデンウィークに開かれます。
©長崎県観光連盟
会場では大テントを張るので雨が降っても心配ありません。
©長崎県観光連盟
130もの窯元や商社が出店するのでたくさんの陶磁器から気に入ったものを探しましょう!
掲載日:
2019/12/06
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
【観光交流センター】〒859-3711 長崎県東彼杵郡波佐見町井石郷2255-2
【やきもの公園】〒859-3711 長崎県東彼杵郡波佐見町井石郷
【中尾山伝習館】〒859-3712 長崎県東彼杵郡波佐見町中尾郷332