日本が鎖国していた時、海外との交易はすべて長崎港を通してのみ行われましたが、鎖国前は平戸が海外交易の拠点でした。その交易によって伝わってきたものの一つが砂糖でした。併せて西洋の菓子(南蛮菓子)も伝えられたため、平戸はスイーツの町として知られるようになりました。市内には今でも歴史の長い菓子処が残っています。そんな平戸の銘菓を5つの店舗で少しずつ味わえるクーポン券が現在人気です。お得なクーポン券を使って、「平戸スイーツ巡り」を楽しんでみましょう。
「熊屋」は、1762年創業の菓子処です。店内には和菓子と併せて洋菓子も置かれています。名物は、ポルトガルやオランダから入って来た砂糖を使って作った「牛蒡餅(ごぼうもち)」。この名前は餅の色合いや形状が牛蒡に似ているところから来ています。当初、牛蒡餅は平戸藩の藩主がお茶菓子として食べていたものですが、やがて一般の家庭にも広がり、今ではお祝い事や法事などが行われるときの「お配り菓子」として使われるようになりました。
©平戸観光協会
1762年創業の熊屋
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店内には和菓子と併せて洋菓子も販売されています。
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熊屋の名物「牛蒡餅」
「蔦屋(つたや)」は、室町時代の1502年に創業した和菓子店です。店の建物は、オランダ艦隊の航海長で後に徳川幕府の外交顧問を務めたイギリス人三浦按針(ウィリアム・アダムス)が暮らした建物を改築したもので、「按針の館」と呼ばれています。
長い歴史を持つ蔦屋は、江戸時代には平戸藩主松浦家の御用菓子を作り、明治以降には皇室にも献上してきました。今では、ヨーロッパから伝えられた伝統菓子の他に、創作和菓子も販売しています。
その中でもよく知られているのが、カステラの茶色く焼けた表面の部分を切り取り、スポンジの部分を卵黄の中にくぐらせ、熱した糖蜜の中であげた「カスドース」です。「カス」はカステラの「カス」、「ドース」はポルトガル語で「甘い」を意味します。400年以上前の作り方が伝わった当時、希少な材料を使って作られたカスドースは、支配者だけが食べることのできる贅沢品でした。
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三浦按針が暮らした建物を改築した「蔦屋」の「按針の館」
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ヨーロッパの伝統菓子の他、創作和菓子も販売しています。
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蔦屋の名物「カスドース」
平戸市の城下町ある菓子処「津乃上(つのうえ)」は、江戸時代末期に創業しました。それ以来、この地域のイベント、またお祝い事や法事などでの注文が多く、それだけに地元の人々とのつながりが強いお店として知られています。店の名物は「平戸城もなか」です。平戸城の形をしたパッリとしたもなかの皮の中においしい餡が詰まっています。その他、平戸の名物になっている牛蒡餅も津乃上の看板商品になっていて、平戸城もなかと併せてセットとしても販売。また、ふるさと納税のお礼品としても提供されています。
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地元の人々と強いつながりのある「津乃上」
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ショーケースに置かれたセット商品
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津乃上の名物「平戸城もなか」
歴史の長い菓子処の紹介が続きましたが、「プチ・イケガメ」は平戸郵便局の反対側にある創業28年という比較的新しい和洋菓子屋です。店の名物は「ひよこ」と「ブレロ」。ひよこは、ソフトボールのボールくらいの大きさで、ぎょろっとした目玉と、頭にちょこんと乗った赤い帽子がかわいらしいケーキです。中にはクリームが詰まっていますが、甘すぎない味がおいしい一品。
フランス語で「アナグマ」を意味する「ブレロ」も、ぎょろっとした目玉が印象的なケーキです。頭についた角のような耳がかわいらしさを増します。
プチ・イケガメでは、その他、池野屋プリンや最教寺で行われる赤ちゃん相撲にちなんだ「小泣き相撲はっけよい」というオリジナル商品も販売しています。
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平戸では比較的新しい「プチ・イケガメ」
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店内では和洋菓子の両方が販売されています。
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店の名物「ひよこ」と「ブレロ」
以上は平戸の城下町にある菓子処ですが、そこから北に約2キロ、平戸港のすぐ近くにあるのが「菓子工房えしろ」です。創業2005年という新しいお店ですが、店舗は築100年以上の民家を改築したため、とても趣のある造りになっています。
えしろの名物は「平戸ひらめサブレ」。これは平戸市の冬のイベント「ひらめ祭り」にちなんで作られた一品で、かわいらしい顔をしたひらめがモチーフになっています。えしろでは、その他、常にショーケースの中に20〜25種類もの生菓子が置かれているなど、品ぞろえの豊富さがうれしいお店です。
ヨーロッパから伝わった砂糖を使って作られるようになった平戸のお菓子。伝統ある牛蒡餅やカスドースを初め、平戸のシンボル平戸城やひらめをモチーフにしたもの、またかわいらしさを織り込んだ創作菓子など味わってみたいものばかりですね。平戸の5か所の菓子処でバラエティーに富んだスイーツが少しずつ味わえる「平戸スイーツ巡り」、ぜひ参加してみてください。「Cyoi食べ」クーポン(500円)は平戸市観光案内所ならびに平戸観光協会で販売しています。
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平戸港の近くにある「菓子工房えしろ」
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店内にたくさんの種類の和洋菓子が並べられています。
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平戸ひらめ祭りにちなんで作られたえしろの名物「平戸ひらめサブレ」
写真提供:平戸観光協会
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
掲載日:
2021/04/30
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
【熊屋】〒850-5117 長崎県平戸市魚の棚町324
【蔦屋】〒859-5113 長崎県平戸市木引田町431
【津乃上】〒859-5117 長崎県平戸市魚の棚町300
【プチ・イケガメ】〒859-5114 長崎県平戸市築地町508
【えしろ】〒859-5104 長崎県平戸市崎方町835-5