平戸市の平戸島の北端からさらに北に約7キロ行った所にある「大島」。正式には「的山大島(あづちおおしま)」と呼ばれるこの島では、古い町並みや、断崖、そして風力発電所や棚田と、さまざまな表情を持ったものに出会うことができます。さあ、さっそく大島探索に出かけてみましょう!
「神浦(こうのうら)」は大島の中心で、かつては平戸藩の一部として捕鯨業で栄えた地域です。捕鯨業は18世紀に廃れてしまいましたが、その後神浦には、通りに沿って町家が建てられました。こうしてできた町並みは、火事で焼けることもなく、今でも江戸時代の港町の面影を残したまま保存されています。2008年には、このことが評価され、「重要伝統的建造物群保存地区(港町)」に指定されました。
普通、「古い町並み」というのは、まっすぐな道路の脇に発展する場合が多いのですが、大島は山の多いところです。その上神浦湾が細長く奥まで入り込んでいるため、広い敷地が確保できず古い町並みも曲折した道路に沿って建てられているのが特徴です。
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重要伝統的建造物群保存地区に指定されている神浦の町並み
©平戸市
昔捕鯨で栄えた町の跡に建てられた江戸時代の町家
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山が多く湾が奥まで入り込んでいるため道路は曲折しています。
神浦の町並みを北に向かって抜けるとすぐに見えてくるのが「大島ふるさと資料館」です。水色の屋根にオレンジ色のレンガが美しい2階建ての施設なのですぐ見つけることができるでしょう。
大島には2万年前から人が住み始めたと言われています。また、日本の中では大陸にも近いことから交易船や大陸に渡る船が寄港する場所としてさまざまな歴史の跡を残しています。この資料館では、古墳から出土したものや捕鯨関係の資料、また島の人々が使った民具などが展示され、大島の歴史と文化に触れることができます。
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水色の屋根とオレンジ色の壁が美しい「大島ふるさと資料館」
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大島には2万年も前から人が住むように。古墳から出土したものが展示されています。
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大島の人々が使った民具も展示されています。
大島の歴史に触れた後は、ぐっと現代に戻り、「的山大島風力発電所」を見学しましょう。長崎県の最北端近くにある大島は、海から吹いてくる季節風が直接当たり、風力発電には最適な条件を備えています。
2007年、この立地条件を利用して的山大島風力発電所が作られ運転を開始しました。現在では大島の東側と西側の海岸近くの小高い丘に白い巨大な風車16基が点々と並んでいます。
大島の風力発電所は、離島における風力発電施設としては日本最大級。約20,000世帯分の電力を生産し、海底ケーブルを通して九州本土へ送っています。
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大島の海岸近くの丘に建設された風力発電の風車
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離島である大島は風が強く風力発電に適しています。
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生産された電力は海底ケーブルを通して九州本土へ送られます。
大島東部にある大賀断崖は大島の自然が残っている景勝地として知られている所です。断崖を横から見ることのできる場所に立つと、ごつごつとした荒々しい岩肌の断崖が長く続いていることがわかります。
断崖の上は草原になっていて、トイレ・水シャワーの整備されたキャンプ場として開放されています。あずま屋もあり、キャンプ場は無料で利用できます。
断崖の切れ目に坂になった草原があり、そこを降りて行くと海に出られます。岩場の海岸なので、海水浴にはあまり向いていないかもしれませんが、釣りやカヌーを楽しんだりするのに適しています。本格的な海水浴を楽しみたいときは、大賀断崖西側の大根坂湾(おおねざかわん)にある大根坂白浜海水浴場がおすすめです。
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荒々しい岩肌の大賀断崖の上はキャンプ場になっています。
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断崖の切れ目にある坂を降りて行くと海岸に行けます。釣りやカヌーを楽しみましょう。
大島の探索もそろそろ終わりに近づいてきました。最後は朝鮮井戸と大根坂棚田を見学しましょう。島の東西を行ったり来たりすることになってしまいますが、朝鮮井戸は西部の的山港の近くに有ります。豊臣秀吉の家来が朝鮮に出兵する前に、船で使う水を汲んだと言われている井戸です。海のすぐ近くにある井戸なのに、湧出てくる水は真水ということで重宝がられたそうです。そのため、当時、大陸に渡った遣唐使や遣明使の船もこの港に立ち寄り、水を汲んでいきました。朝鮮井戸は史跡として平戸市の文化財に指定されています。
大根坂棚田は先ほど紹介した大根坂白浜海水浴場の近くにあります。平地が少ない大島にはあちこちに棚田がありますが、特にこの大根坂棚田は、ここから見える夕日が美しいことで知られています。大島の探索の最後に夕日に映える棚田の美しい風景を写真に収めてみてください。
平戸市の的山大島は、決して大きくはない島ですが、江戸時代の町並みが残っていたかと思うと、近代的な風力発電の風車があったりと、たくさんの違う顔を持っています。ぜひ足を運んで探索を楽しんでみてください。
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昔、豊臣秀吉の朝鮮出兵で出発前に水を汲んだと言われている朝鮮井戸
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夕日に映えて美しい大根坂棚田
写真提供:長崎県観光連盟、平戸市
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
掲載日:
2020/08/28
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
【神浦の町並み】〒859-5801 長崎県平戸市大島村神浦
【大島村ふるさと資料館】〒859-5802 平戸市大島村前平1456
【的山大島風力発電所】〒859-5802 長崎県平戸市大島村前平1618
【大賀断崖】〒859-5803 長崎県平戸市大島村西宇戸
【大根坂白浜海水浴場】〒859-5804 長崎県平戸市大島村大根坂
【朝鮮井戸】〒859-5806 長崎県平戸市大島村的山戸田1667-2
【大根坂棚田】〒859-5804 長崎県平戸市大島村大根坂