自然に恵まれた五島市ですが、歴史や文化にも深いものがあります。今日はこの市にある「館」のつく施設を4つ紹介したいと思います。4つの内五島観光歴史資料館と山本二三美術館は五島市の中心地である福江港近くにあり、遣唐使ふるさと館は三井楽町、そして笠松宏有記念館は奈留島にあります。それぞれの館を訪ねて、五島市の文化をより深く理解しましょう。
五島観光歴史資料館は福江城の城跡に建てられた施設です。この城郭内にはそのほか福江文化会館や五島市立図書館などが建てられています。歴史資料館の外観はお城の一角を思わせるような素晴らしい設計になっています。館内では、1階から3階までに常設展示エリアが設けてあります。
1階には、ハイビジョンシアター、観光ガイドコーナー、特産品コーナーなどがあります。シアターでは「バラモンの空」という観光映画を見ることができます。バラモンとは五島市福江に昔から伝わる凧のことで、もともとは「荒々しく向こう見ず」という意味です。その言葉の通り、この凧には兜をくわえてにらんだ鬼が描かれています。これは敵に後ろ姿を見せない勇者を表現しているそうです。
2階には五島列島の歴史資料を展示しています。人が住むようになった約2万年以上も前の旧石器時代から始まり、仏教文化の伝来や、日本全国を歩いて初めて日本の地図を作った伊能忠敬が、五島列島にもやってきて測量したその足跡についても知ることができます。
そして3階は、主にキリシタン文化の展示エリアになっています。ここでは体感シアターがあり、教会の中が再現されています。
©長崎県観光連盟
お城の一角を思わせるような素晴らしい外観の五島観光歴史資料館。
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資料館の中では昔五島列島で使われていたさまざまな道具などが展示されています。
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歴史料館の3階にはキリシタン文化の資料が展示されています。
山本二三(やまもとにぞう)氏は、五島市出身のアニメーション映画の美術家です。「天空の城ラピュタ」「火垂るの墓」「もののけ姫」などたくさんのアニメーション制作において、美術監督を務めてきました。その山本二三氏の作品を展覧するために作られたのが「山本二三美術館」です。
五島観光歴史料館から南へ約500メートルほど行った所にあるこの美術館は、福江町の武家屋敷「松園邸」を改築してオープンしたものです。
館内は、松園邸の武家屋敷の雰囲気を残すために屏風型のパネルを使っています。また、山本氏のアトリエも再現され、モニターには実際に絵を描いている氏の様子が映し出されています。その他「空と雲の部屋」では、部屋の壁一面に山本二三氏が描いた空と雲の絵が貼られていて、雲をモチーフにしたソファーに座って短編アニメを見ることができます。
©五島市
武家屋敷を改築した「山本二三美術館」
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館内では、山本氏のアニメ作品の他、五島の空と雲を描いた作品も展示されています。
「遣唐使ふるさと館」は福江島北端の「三井楽町(みいらくちょう)」にある道の駅です。道の駅といっても、館内にさまざまなコーナーのあるかなり規模の大きな施設です。
中心となるのがこの施設の名前にもなっている遣唐使に関する映像を上映している万葉シアターと展示コーナーです。万葉の時代の人々の暮らしや遣唐使の苦難に満ちた旅の歴史などを知ることができます。
そして80人を収容できるレストラン「みいらく万葉村」では、ランチとディナーが楽しめます。このレストランのおすすめは「ふるさとバイキング」。金・土・日・祝日のランチの時間にやっています。
その他、物産販売コーナーでは五島市の特産品や万葉グッズが販売されています。また研修室や広い和室もあり、会議や講習会また宴会などに利用できます。
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「遣唐使ふるさと館」はさまざまなコーナーのある大規模な道の駅です。
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この施設は例年、まつりやマラソンの会場としても利用されています。
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館内にある物産販売コーナーで五島のおみやげを見つけよう!
遣唐使ふるさと館の万葉シアターでは、遣唐使と万葉をテーマにした2種類の映像「遣唐使ものがたり」と「行きし荒雄ら」が上映されています。五島市三井楽は遣唐使船の最後の寄港地だったと言われています。そのため、万葉集には三井楽のことを詠んだ歌が収められています。
遣唐使ものがたりは、7世紀ごろ大陸文化を学ぶために唐(今の中国)に渡った遣唐使のことを物語にしたものです。
映像は人形アニメによって構成されていて、遣唐使の一人だった空海をモデルにした等身大のロボットが案内役を務めてくれます。
今では中国まで飛行機で数時間で行けるようになりましたが、当時は船で長い月日をかけて渡航しなければいけませんでした。途中の海では嵐にあうこともあったでしょう。そして渡航先の唐では違った言語を使い別の文化を学ばなければなりませんでした。そうしたことがどんなに大変だったか、この映像からきっと遣唐使たちの勇気と情熱を感じ取ることができるでしょう。
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展示コーナーに置かれた遣唐使の乗った船の模型。
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「遣唐使ものがたり」は人形アニメで制作されています。
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遠い昔に命を賭けて大陸文化を日本に伝えてくれた遣唐使のことを知りましょう。
五島・館めぐりの最後は奈留島にある「笠松宏有記念館(かさまつひろともきねんかん)」です。廃校になった「船廻小学校」の校舎を改修し2008年に開館したもので、奈留島出身の画家笠松宏有の作品を展示しています。
笠松宏有は昭和から平成初期に活躍した画家で、代表作には「子供部屋」「五島の夜の海」「隠れキリシタンの洞窟」などがあります。館内の4つの展示室には、笠松宏有の青年時代から晩年までの作品が年代順に展示されています。
世界遺産の江上天主堂のある奈留島は潜伏キリシタンの歴史のあるところで、笠松宏有も高校時代を過ごした長崎で洗礼を受けました。作品にはクリスチャンとしての祈り、そして五島、長崎への郷愁が良く表現されています。
五島市にある4つの館を紹介しました。五島市には美しい自然だけでなく遣唐使や潜伏キリシタンなど歴史や文化にも深いものがあります。そうした自然・歴史・文化が大きな影響を与えたからでしょうか、山本二三や笠松宏有など芸術家も誕生していますね。ぜひ4つの館をたずねて、五島の良さを再発見してみてください。
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笠松宏有記念館は廃校になった「船廻小学校」を改修してオープンしました。
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笠松宏有は五島市の奈留島出身の画家です。
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館内には展示室が4つあり、笠松宏有の作品が時代別に展示されています。
写真提供:長崎県観光連盟、五島市
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
掲載日:
2020/08/21
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
【五島観光歴史資料館】〒853-0018長崎県五島市池田町1-4
【山本二三美術館】〒853-0017長崎県五島市武家屋敷2-2-7
【遣唐使ふるさと館】〒853-0601長崎県五島市三井楽町浜ノ畔3150-1
【笠松宏有記念館】〒853-2204長崎県五島市奈留町船廻937-1