長崎県対馬市は島のほとんどが山に囲まれ多くの自然を感じることができる魅力的な島です。
対馬島内にはその自然を生かした観光スポットがたくさんあり、対馬ならではの澄んだ空気と昔から姿を変えず残る絶景スポットがたくさんあります。
また、対馬は九州本土と朝鮮半島の間に位置する離島であるということもあり、周囲からの干渉が少なく昔のままの姿で残っている歴史的な場所や文化、風習などが多く残っている島でもあります。
そのため、対馬島内には神社や太平洋戦争時の砲台跡などが多く残っており、自然だけではなく歴史を感じることのできるスポットもたくさんあります。
そんな中でも対馬島内で最も有名な場所があります。それが対馬市厳原町にある「万松院」です。
万松院は古くから対馬を治めていた宗家(宗家20代義成)が元和元年(1615年)に父の冥福を祈る目的で建てられたお寺といわれており、その後も宗家累代の菩提寺となっています。
この万松院の墓所としての規模は非常に大きく、その規模は全国の有名な大名と同じぐらいとも言われています。
また、当時の姿が綺麗に残っていることもあり、山口県萩市の「萩藩主毛利家墓所」や石川県金沢市の「加賀藩主前田家墓所」とともに日本三大墓地の1つとも言われています。
左手側が本堂、奥に見える橋を渡ると宗家の墓地が並ぶ
万松院の本堂は過去に何度か火災によって消失していて、現在の本堂は明治12年(1879年)に建造されたものです。
しかし、本堂前の山門と仁王像は過去の火災被害にはあっておらず当時の姿のまま残っていて、建造当時の安土桃山式の建造物として非常に歴史的価値のあるものです。
万松院の参道にかかる石橋を渡ると歴代宗家が祀られる墓地があるのですが、この道中は「百雁木(ひゃくがんぎ)」と呼ばれる、対馬島内の石を使って作られた132段の緩やかな階段を上っていかなければいけません。階段は直線の為、先が長いように見えますが、1段1段の段差は低く緩やかなので万松院の独特な荘厳な雰囲気を感じながら上ることができます。
百雁木を上っていくと所々に杉の木があり中には樹齢も400年以上の杉の木もあります。
万松院を訪れたらこの杉の木にもぜひ注目していただきたいです。
©(社)対馬市観光物産協会
赤い山門のなかに仁王像がたたずんでいる
©(社)対馬市観光物産協会
距離はありますが、1段1段は上りやすいです。
敷地内の様々な場所に大きな杉の木が見られる
万松院の本堂には歴史的にも非常に価値のあるものが数点保管されています。
対馬は古くから朝鮮との交流がありその距離の近さから貿易などが多くおこなわれていた歴史があります。
そのため対馬藩主が亡くなった時に当時の朝鮮国王は弔礼品として三具足を贈ったと言われています。
「三具足」は仏具の1つで香炉、燭台、花立の総称です。現在、万松院に保管、展示されている三具足は非常に状態が良くここまで状態の良い三具足は日本でも非常に貴重なものだそうです。
対馬に贈呈された三具足は円錐型の花立、蓋に獅子を模った香炉、そして亀の上に鶴が乗り、その鶴のくちばしの上が燭台となっていて全て青銅製です。三具足それぞれのデザインは非常に細かなデザインで、時間と手間がかかっているものばかりなのは一目瞭然です。
そのため、対馬と朝鮮のこれまでの歴史の中でそれぞれが友好関係にあったという証明になるのがこの三具足ではないかと言われるほどです。万松院を訪れた際には忘れずに見ておきたいものの1つです。
©(社)対馬市観光物産協会 左から香炉、燭台、花立
万松院では1年に1度お祭りが開催されます。お祭りでは夕方から132段の石段の両脇にある約350基の石灯篭に火が灯されます。拝観者は手提げ提灯に火を灯し拝観することができ、暗闇の中で無数の灯が醸し出す景色は非常に幻想的で見ごたえのある景色です。夜の拝観とこの景色を見ることができるのはこの日しかありませんので、万松院をメインで観光しようとするのであれば、この日に日程を合わせて昼と夜とそれぞれ雰囲気の異なる景色を見ることができます。
万松院は歴史も古く、当時と変わらぬ姿のまま残っている貴重な場所ですので、まるでタイムスリップしたかのような感覚で、対馬の歴史と自然を一度に満喫することができます。日常生活では味わうことのできない空気をぜひ味わいに来てください。
足元は間接照明などが設置され安全に上ることができます。
文・写真 Nehitsuzi_landscape 対馬在住のカメラ男子。対馬の美しい風景を紹介します。
掲載日:
2020/01/28
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