壱岐の南部、郷ノ浦と石田地区は、きれいなビーチがたくさんあることで知られています。ビーチの他にも、岳の辻展望台や、鬼の足跡などたくさんの見どころがあるんですよ。今回はそんな壱岐の南部でぜひ楽しんでもらいたいスポットをいくつか紹介したいと思います。
まずきれいなビーチから紹介しましょう。
「ツインズビーチ」の愛称で知られているのは、壱岐の南西海岸にある塩樽(しおたる)海水浴場と小水浜(こみずはま)海水浴場です。これら2つの海水浴場が小さな岬を挟んで隣り合わせになっているのでツインズビーチと呼ばれています。どちらのビーチにも海の家や休憩場があって、ダイビングやシーカヤックなどの海のスポーツも楽しめます。
筒城浜(つつきはま)海水浴場は、壱岐の南東海岸の石田町にあるビーチで、「日本の快水浴場100選」にも選ばれています。白い砂浜が約600メートルも続く美しい海岸です。海は遠浅。近くにはキャンプ場、バーベキュー広場、テニスコート等が整備されているので、夏になるとたくさんの人がやってきます。壱岐では一番人気のある海水浴場なんですよ。
大浜海水浴場は筒城浜海水浴場から約2キロ南に下がった所にあります。ここも人気のあるビーチです。夏は海水浴客で賑わい、その他の季節ではサーフィンやウインドサーフィンを楽しむ人がやってきます。
©長崎県観光連盟
ツインズビーチと呼ばれている塩樽(しおたる)海水浴(左側)と小水浜(こみずはま)海水浴場
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筒城浜海水浴場は「日本の快水浴場100選」に選ばれているんですよ。近くにのレジャー施設も充実。
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大浜海水浴場も夏は海水浴客で賑わいます。
岳ノ辻(たけのつじ)展望台は、標高212.8メートルの壱岐で一番高い山「岳ノ辻」の山頂に作られた展望台です。郷ノ浦港から車で東に10分ほど行った所にあります。展望台では360度のパノラマが楽しめ、壱岐島全体と島の周辺にある原島や長島などの小島が見渡せます。
岳ノ辻は、今では観光スポットになっていますが、昔は国防の監視スポットとして使われていました。そのため山頂には「のろし台」が置かれていたんですよ。こののろし台、現在復元されて見ることができます。また、東西に長く伸びたこのエリアの東側には「岳ノ辻遠見番所」の跡があり、西側には「岳ノ辻園地西側展望デッキ」があります。岳ノ辻には毎年元日に初日の出を拝む人がたくさん訪れます。
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岳ノ辻展望台。360度のパノラマが楽しめます。
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展望台から見た海の風景
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展望台からはこんな森の風景も見えるよ。
郷ノ浦は壱岐島で最大の町であり行政の中心になっているところです。この郷ノ浦の発展において大切な役割を果たしてきたのが玄関口である郷ノ浦港。この港は、壱岐がまだ平戸藩に属していたころから港湾として使われていましたが、海岸が遠浅だったため大型の船は出入りできませんでした。そこで壱岐が平戸から離れて町になった時に(そのころは武生水町と呼ばれていました)、少しづつ港を開発し、大きな船も寄港できるように改造したのです。そのおかげで今ではたくさんの旅客船や貨物船が船付けできるようになりました。そのほとんどは対馬の厳原港と博多港から来るフェリーやジェットフォイルです。2016年に郷ノ浦港に発着した船は約15000隻、利用客数は約40万人にも達しています。
ところで、この港の入口付近にある「元居公園」には、「春一番の塔」と呼ばれる2本の白い柱が立っています。「春一番」というのは春の初めに吹く強い風のことですが、この風が吹くといよいよ春の到来だということになりますね。ところが、実はこの言葉には悲しい出来事が隠されているのです。
1859年、郷ノ浦付近で「春一番」の嵐が吹き荒れ、その頃漁に出ていた漁師がたくさん遭難しました。遭難した人々を悼んで立てたのがこの「春一番の塔」でした。2つの白い塔は船の帆を表しています。
春一番という言葉は、この地域で使われていた言葉ですが、そのことを民族学者の宮本常一が『俳句歳時記』で紹介しました。それ以来、日本全国に広まったのだそうです。なお、この塔が立っている所から下の方にある八幡神社に向かって階段を降りて行くと神社の横に遭難した人の慰霊碑「春一番供養塔」が立っています。
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壱岐で最大の郷ノ浦港には対馬や博多から船がやってきます。
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1859年に春一番の嵐で遭難した人を悼んで立てた「春一番の塔」
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亡くなった人の慰霊碑「春一番の供養塔」は八幡神社の横に立っています。
郷ノ浦には「鬼の足跡」と呼ばれるユニークな形状をした岩壁があります。郷ノ浦の西端にある牧崎の先端にあるもので、海岸近くにあるぽっかりと穴の空いた玄武岩の崖がそれです。穴の周囲を測ると約110メートルもあるかなり大きなもの。これはもちろん海水が長い間に侵食してできたのですが、どこか足跡に似ていることから大鬼の「デイ」が残したものだと伝えられています。デイは鯨を捕まえるために踏ん張ったのでこんな足跡ができたのだとか。その時、もう一つの足は壱岐勝本の辰の島にあって、そこにも足跡を残したそうです。と言うわけで辰の島にも「鬼の足跡」があるんですよ。2つの鬼の足跡、ぜひ見てみたいね!
郷ノ浦の「鬼の足跡」周辺には手つかずの原野が残っているので、壱岐の大自然を感じ取ることができます。
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郷ノ浦にある鬼の足跡。模倣片方の鬼の足跡は勝本の北にある辰の島にあります。
辰の島にあるもう一つの鬼の足跡
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郷ノ浦の鬼の足跡周辺には自然画いっぱい残っています。
松永安左エ門(まつながやすざえもん)は明治時代に壱岐の石田町で生まれ日本の電力の普及に尽力した人。「日本の電機王」や「電力の鬼」と呼ばれています。「松永安左エ門記念館」はその功績を讃えて、彼の生家の敷地内に作られました。祈念館の建物付近には電車が展示されています。これは松永安左エ門が1909年に設立した「福博電気軌道」が運行していた福岡市の路面電車で使われていたものです。この鉄道は後に西日本鉄道に変更となりました。記念館内には、松永が使った身の回り品や資料などが展示されています。
壱岐南部の郷ノ浦と石田の観光スポットや歴史の跡を辿れるスポットをいくつか紹介しました。海水浴場はどこもとてもきれい。今度の夏にぜひ泳いでみたいですね。そして、岳ノ辻展望台に登って壱岐全体の風景を眺めたり、鬼の足跡を訪ねておもしろい岩壁の風景を写真に撮ったりしてみてください。その他、春一番の塔や松永安左エ門記念館などにも足を運んで歴史の跡を辿ってみましょう。
写真提供:長崎県観光連盟ほか
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
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壱岐出身の松永安左エ門は日本の電力の普及に尽力しました
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福岡市内を実際に走っていた電車が展示されています
掲載日:
2019/09/30
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
【ツインズビーチ・小水浜海水浴場】〒811-5154 長崎県壱岐市郷ノ浦町渡良東触2903-1
【ツインズビーチ・塩樽海水浴場】〒811-5154 長崎県壱岐市郷ノ浦町渡良東触2786-2
【筒城浜海水浴場】〒811-5154 長崎県壱岐市石田町筒城東触1916
【岳の辻展望台】〒811-5154 長崎県壱岐市郷ノ浦町若松触398-1
【春一番の塔】〒811-5154 長崎県壱岐市郷ノ浦町郷ノ浦403
【鬼の足跡】〒811-5154 長崎県壱岐市郷ノ浦町渡良東触1956-2
【松永安左衛門記念館】〒811-5214 長崎県壱岐市石田町印通寺浦360-3