長崎県平戸市北部の海岸端にある「オランダ商館」は、江戸時代に日本と交易を始めたオランダの東インド会社が設置した商館です。現在建っている商館は復元されたものですが、館内には当時の様子を伝える資料が展示されています。また商館の周辺には「オランダ埠頭」「オランダ井戸」「オランダ塀」などの遺構が残っていて、その当時のオランダ商人の生活や活動の様子が窺われます。
オランダ商館は1600年代に作られました。徳川家康が天下を統一して江戸幕府を開いてから間もない1609年に海外交易が許されたので建設されたものです。海外交易の商館としては長崎市の出島が有名ですが、平戸のこの商館は出島よりも前に作られた日本で初めての外国人のための貿易拠点でした。
建設後約30年使われていましたが、海外交易が出島だけに限られるようになると、平戸のオランダ商館は解体されてしまいました。
その後長い間放置されていましたが、2000年が日蘭通商400周年であったことから、これをきっかけに商館の復元計画が考案されました。復興計画は、1639年に建設された日本で初めての洋風建築倉庫をモデルとして復活させるというもので、復元された建物は2011年に完成し一般にオープンしました。
©長崎県観光連盟
長崎県平戸市北部の海岸端にある復元された「オランダ商館」
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オランダ商館は2階建てで日本初の洋風建築物です。
オランダ商館の内部も1639年当時の建築様式にならって復元されたものです。まず樹齢700年になる木から切り出した約50センチメートル四方の太い柱が1階に11本、2階に10本建てられ屋根と天井を支え、天井には何本もの梁が組み込まれています。外観は洋風でありながら、内部には日本の建築様式が使われていることがわかります。
展示コーナーは時代別に分けられていて、各時代の資料や関係者の肖像画、またオランダ船の絵、そして当時置かれていた大砲などが展示されています。
もう一つ見逃せないのが、徳川家康が1609年に発給した朱印状(渡航許可証)です。これはオランダ使節に対して発行されたもので、どこの港に寄港して良いかということが書かれています。
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館内ではパネル展示や当日置かれていた大砲などが展示されています。
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当時の関係者の肖像画やオランダ船の絵も展示されています。
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徳川家康が発給した渡航許可証
オランダ商館から約100メートル離れた所には、「オランダ埠頭」があります。昔ここにオランダの商船が停泊し、海外から運んで来た物を降ろしたり日本の物を積み込んだりしました。今でも石畳の足場と石垣の階段が残っていてその頃の様子を偲ぶことができます。
その他商館の基礎となった石垣の跡も残っています。元の商館では切り出した砂岩が21,000個使われていたため、復元された建物も、元の建物に忠実にということで、同じように21,000個の石を使っています。
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今でも石畳の足場と石垣の階段が残る「オランダ埠頭」
オランダ商館の周囲には一部、このように石垣が残っています。
オランダ埠頭と道路を隔てて反対側にあるのが「オランダ井戸」です。小さな遺構ですが、「オランダ井戸」と書かれた札が石垣の塀にかかっているのですぐわかります。茶色のシンプルな門をくぐると大小2つの井戸があるのがわかります。この2つは下の方でつながっています。大きい井戸はそこから直接水を汲むためのもので、小さい方はオランダ商館につながっていて、その中の水は料理用に使われたと言われています。現在、このエリアは手入れがされ、井戸のカバーもオレンジ色の新しい木材で作られていますが、整備される前は3番目の写真のような古い木材のカバーが乗っていました。
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オランダ埠頭の向いにあるオランダ井戸の遺構エリア。
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二つの石枠を組み合わせて作られた井戸
©平戸市文化観光商工部
大きな井戸は屋外からの水汲み用、小さな井戸は屋内からの調理用
さて、最後の見学スポットは「オランダ塀」です。オランダ井戸から20メートルほどさらに西に進んだ所にあります。長崎市にある「オランダ坂」と似ていますが、オランダ塀は高さが2メートルあり、どちらかというと城壁に近いイメージがあります。実際、坂道の上に30メートルに渡って作られたこの塀は、オランダ商館のほか、当時このエリアにあった倉庫、火薬庫、病室等を日本人の目から隠すための垣根として作られたと言われています。
日本で最初に作られた外国人商人のための交易拠点「平戸のオランダ商館」の様子をお伝えしました。この建物の周辺には、その他、埠頭や井戸、そして塀など、鎖国される前の日本の国際交易の歴史を体感できるものが残っています。ぜひ訪ねて見学してみてください。
写真提供:長崎県観光連盟、平戸市 ほか
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
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オランダ塀のスタート地点。約30メートル続きます。
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商館、倉庫、火薬庫、病室などオランダ人の施設を日本人の目から隠すために高さ2メートルの塀が築かれました。
掲載日:
2019/06/25
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