島原市有明町大三東(おおみさき)にある「本多木蝋(もくろう)工業所」は、日本で唯一、「はぜの実」を玉締め式圧搾機で絞り、木蝋を製造している製蝋所です。もともと島原は木蝋の材料である「はぜ」の一大産地であったことから、製蝋も盛んだったそうですが、今では本多木蝋工業所だけになってしまいました。
木蝋から作る和ろうそくは、独特のゆらめきが特徴。また、匂いがほとんどなく、すすもあまりでません。何より化学薬品を使っていないので健康にも良い、といいことづくめですが、材料の「はぜの実」が手に入りにくく、手間がかかることなどからどうしても価格が高くなるのがネックだそうです。
本多木蝋工業所三代目の本多俊一さんの指導で、伝統的な「和ろうそく作り」と「絵付け」に内田さん親子が挑戦します。
趣のある外観。ろうそく型の看板が本多木蝋工業所の目印です。
木蝋の材料となる「はぜの実」。島原は、藩の政策で「はぜ」の植樹を奨励しました。
日本で唯一、玉締め式圧搾機で木蝋を製造している本多俊一さん。
木蝋作りの歴史的な資料などを集めた「櫨(はぜ)の道(みち)資料館」で、本多さんから和ろうそくの説明を受けます。「ほら、違うでしょ」。本多さんが和ろうそくに火をつけると、普段見慣れた洋ろうそくと違い炎が長く、ゆらめきが独特です。じっと見ていると心が安らぐ感じがします。「癒しの効果もあるといわれてますね」と本多さん。
和ろうそくがどんなものかわかったところで、「絵付け体験」です。白い和ろうそくに筆を使ってアクリル絵の具
を塗っていきます。決まりなんてないからね。美来ちゃんと夢菜ちゃんは、自分で好きな色や形をどんどん塗っていきます。自分だけのデザインができるなんて嬉しいね。
実際に和ろうそくに火をつけて、特徴を説明する本多さん。
美来ちゃんが、和ろうそくに絵付け。何を描いているのかな?
夢菜ちゃんも真剣な表情で色を塗っていきます。
絵の具が乾くのを待つ間に、工場に移動してもう一つの「和ろうそく作り体験」を行います。
台の上にいぐさを使った灯芯を立てて、その上から中が空洞になった型枠を差し込みます。型枠はまっすぐに立てるのがポイント。それから、型枠の上に開いた隙間から木蝋をあふれる寸前まで流し込みます。少し時間が経つと灯芯のいぐさが木蝋を吸うので、木蝋を継ぎ足します。その作業を何度か繰り返します。後は冷えて固まるのを待つだけ。
熱を加えて溶かした木蝋です。
灯芯の上から型枠を差し込みます。
型枠に木蝋を流し込みます。
「さあ、もういいみたいだよ」。本多さんの言葉を待つのももどかしく、型枠をそっと抜くと、緑色の生成りの和ろうそくができています。なんだか不思議だね。美来ちゃんは、手に持って自慢気です。
冷えて固まったら、型枠を抜きます。
緑色の和ろうそくのできあがりです。
美来ちゃんは自慢気です。
体験の合間に、本多さんに工場を見せてもらいました。80年前の機械を使って作っていること、古い機械だから部品の交換が難しいこと、材料となる「はぜの実」がなかなか手に入らないこと、などなど。大変だけど、代々受け継いできた島原市の伝統工芸を守りたいという熱い気持ちが伝わってきました。
お母さんの千春さんは「この近くを通ることはあっても、地元にこんな場所があるなんて知りませんでした」と驚いていました。美来ちゃんと夢菜ちゃんも、絵付けと和ろうそく作りの体験を通して、本多さんが大変な仕事をしているのが少しはわかったみたい。みんながもっと木蝋のこと、和ろうそくのことを知ってくれるといいね。
文・写真 中尾知徳
体験の合間に工場見学。古い機械がいっぱい並んでいます。
二人が絵付けした和ろうそくも乾燥してできあがりました。
掲載日:
2018/08/08
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