長尾半島は、パールシーリゾートの対岸、付け根から半島の先までおよそ400メートルの細長い小さな半島です。西海国立公園の中にあるため、陸続きの散策路を歩くと九十九島の豊かで貴重な自然環境をとても気軽に見て回ることができます。
冬のちょっと寒い日の午後。パールシーリゾートの駐車場に車を停めて、海岸沿いから長尾半島へ歩いてみました。駐車場あたりから「長尾半島→」という看板が立てられていたので、それに従って住宅が建ち並ぶ道へと進んでいきます。やや坂道。10分ほど歩くと、「もう、手袋外しても、いいかな」と思うぐらい身体が温まってきました。
シイやカシ類など、照葉樹がうっそうとした林道を上っていくと、「西海国立公園 長尾半島」と書かれた入り口に到着。半島には遊歩道が整備されて、ベビーカーを押しても進めそうです(ただし、アップダウンがあります)。
パールシーリゾートのヨットハーバーを横目に、長尾半島を目指します
長尾半島の入り口。坂道を上ってきたので、「ふぅー」
遊歩道が整備されています、まずは、まっすぐ歩いていきます
九十九島では、多くの貴重な植物を見ることができるとのことですが、さすがに冬の時期は寂しいのかなーと思いながら歩いていると、長細い緑の葉の間にピンクの小さな小さな花が咲いている木を発見。
「ハマジンチョウ」です。
1~2メートルの低木で、日本の南から中国南部や台湾など比較的暖かい地域で見られる指先ほどの可憐な花です。この九十九島が自生の北限、これ以上北の地域では育たないとされています。日本国内では九州南部や沖縄などに分布していて、九十九島ビジターセンターの学芸員さんによると、海流に乗って九十九島に種子が運ばれてきたのではないか、ということです。
でも、その数はどんどん減っています。国際機関や日本の環境省などがそれぞれ、絶滅の恐れがある野生生物を記した「レッドリスト」を作成していますが、ハマジンチョウは、環境省レッドリスト絶滅危惧Ⅱ類、長崎県レッドリスト準絶滅危惧、佐世保市レッドリスト絶滅危惧ⅠB類に選定されています。そこで、九十九島ビジターセンターが3つの島のハマジンチョウについて観察・記録するモニタリングを行っているほか、環境省は日当たりが悪くなって衰弱した木が元気になるように市民ボランティアのみなさんに周りの枝を切ってもらうようお願いしたそうです。
佐世保市のレッドリスト(2013年改訂版)には昆虫や植物など863種類が載っていて、佐世保市のホームページからも見ることができます。
よーく見ると、あ!小さなピンクの花。ハマジンチョウです
©西海国立公園九十九島ビジターセンター
佐世保市のレッドリストでは「絶滅危惧ⅠB類「近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの」と設定
©西海国立公園九十九島ビジターセンター
九十九島ビジターセンターをはじめ、市民のみなさんが、元気に育つよう手入れをしています
散策路を歩いていくと、「パーゴラ」、藤棚のような「棚」にうわっっと茂っているツル性の植物を見つけました。国内では熊本県など4カ所しか自生が確認されていないという「トビカズラ」です。
冬の時期はツルと葉しか見ることができませんが、4月下旬から5月中旬にかけて濃い紫色の花が咲くそうです。元々は北九十九島のトコイ島で確認されたトビカズラを、2007年に人工授粉して芽を出させて、長尾半島に植えたとのこと。独特の香りもあるそうで、トビカズラの花が咲く春にまた、長尾半島に見に来たいなーと思いました。
散策路の途中、「パーゴラ」に茂っているのが「トビカズラ」
©西海国立公園九十九島ビジターセンター
トビカズラの花。春に濃い紫色の花が咲くそうです
©西海国立公園九十九島ビジターセンター
一見すると、ブドウが実っているみたいですね
花や木の名前が書かれた名札をチェックしながら、半島の先端にある南展望所に到着。入り口からゆーっくり歩いても10~20分ほどで、お天気もいいし、周りの景色もきれいだし、とってもいい気分です。
九十九島ビジターセンターであらかじめいただいた「かしまえ散策MAP」(九十九島ビジターセンター ホームページ内)によると、春夏秋冬、どの季節でも花が咲く長尾半島ですが、冬のこの時期は、ヤブツバキの花やシャリンバイ、トベラなどの実がなっているようすを見ることができます。地図を確認しながら、それぞれの花木がどこにあるのか探してみよう!とか、偶然、見つけた花の名前は何だろう?と調べてみたり、九十九島や植物にますます興味が沸く楽しい時間でした。
©西海国立公園九十九島ビジターセンター
寒い冬にパッと目を引く「ヤブツバキ」
散策途中、九十九島遊覧船「パールクィーン」と九十九島海賊遊覧船「みらい」が見えました!
©西海国立公園九十九島ビジターセンター
シャリンバイの花。長尾半島では、5月ごろ花が咲き、12~3月に実がなるようです
ちなみに、春の初めにはアオモジやヤマザクラが咲き始め、4月から5月にかけてトビカズラやハクサンボクが花を付けます。そして夏には赤いブラシのようなネムノキや夏空に映える黄色の花・ハマボウ、それにカノコユリが次々と咲き、秋にはクズやツワブキの花・・・季節がめぐっていくのを感じられそうです。
ちょうど、この日はお天気もよく、周りの景色も楽しみながらおよそ1時間半、パールシーリゾートから長尾半島往復の散策を楽しみました。青い海に浮かぶ養殖いかだや行き交う船、大空を悠々と飛ぶ鳥たち、そして美しい九十九島の風景。普段、運動不足の大人には「きょうは歩いたなー」と思うぐらいの運動量ですが、元気いっぱいの子どもたちには途中、走り出したくなるような、そんなコースかもしれません。
今回は長尾半島の植物を中心にお伝えしましたが、次は面白い模様の「地層」など長尾半島の風景に注目した散策コースを紹介します!
©西海国立公園九十九島ビジターセンター
「ネムノキ」。夜になると葉と葉が合わさって眠るように見えることから名付けられた
©西海国立公園九十九島ビジターセンター
「ハマボウ」は海に近いところに咲くことができ、「塩生植物」と呼ばれる
周りの景色も最高です!とっても楽しい散策となりました♪
写真提供:西海国立公園九十九島ビジターセンター
写真・文:冒険する長崎事務局
掲載日:
2023/02/23
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
佐世保市鹿子前町1053-2(西海国立公園 九十九島ビジターセンター)