長崎半島の西側に浮かぶ「高島」。この島では18世紀ごろから石炭の採掘が始まり、島は昭和の終わりまで鉱業で栄えていました。その当時の様子を伝えている高島炭坑の跡は、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産として登録されています。歴史の跡が残る高島ですが、同時にきれいな海岸や展望地もあります。高島に足を運んでいろいろな場所を探索してみましょう！

高島を空中から撮った写真を見ると、北側にたくさんの緑がありますが、南側はそのほとんどが灰色になっていることがわかります。この灰色の部分は、元々高島の南側にあった、上二子島と下二子島という２つの島との間をボタと呼ばれる捨石で埋め立て、高島と陸続きにした場所です。では、なぜ埋め立てたのでしょう。それは高島の炭鉱で働く人々のための住宅が必要だったからで、埋立地にはたくさんの高層アパートが作られました。今ではそうしたアパートはほとんど取り壊され、その跡が残っています。
世界遺産の構成資産として登録されているのは「北渓井坑（ほっけいせいこう）」と呼ばれる炭坑の跡です。石炭採掘のために垂直に掘られた、深さ43メートルの竪穴式のこの炭坑では、日本で初めて蒸気機関による石炭生産技術が用いられ、その技術はその後、端島（軍艦島）炭鉱や三池炭鉱でも導入されました。軍艦島は、同じ世界遺産の構成資産としても登録されています。

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  ©ウィキペディア
  高島の空中写真

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  ©長崎市
  世界遺産の構成資産に登録されている北渓井坑

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  ©長崎市
  同じように世界遺産の構成資産に登録されている軍艦島

高島の北渓井坑は、明治時代が始まったばかりの1869年に、当時長崎で活躍していたイギリスの貿易商人 トーマス・グラバーが佐賀藩と共同してつくったものです。グラバーは高島に洋風の邸宅をつくりました。この邸宅は長崎市内にある本宅のグラバー邸に対し、「グラバー別邸」と呼ばれています。現在建物は残っていませんが、建物の基礎石や井戸の跡が残っています。
最初グラバーと佐賀藩によって作られた北渓井坑は、その後、後藤象二郎に受け継がれ、最終的には三菱の創始者である岩崎彌太郎へと引き継がれました。そのため、高島は「三菱発祥の地」とも言われていて、高島港ターミナルのすぐ近くには岩崎彌太郎の像が建っています。そして銅像と道を隔てた反対側に「高島石炭資料館」があるので、ぜひ立ち寄って、高島炭坑の歴史資料に触れてみましょう。

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  ©長崎市
  トーマス・グラバー別邸の跡地

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  ©長崎県観光連盟
  高島港ターミナルの近くに建てられた岩崎弥太郎の像

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  ©長崎市
  三菱の創始者 岩崎弥太郎は、高島の炭坑を受け継ぎ発展させました。

高島の北部には、先に紹介したグラバー別邸跡の他、海のレジャーが楽しめるスポットがいくつかあります。まず、この別邸の敷地のすぐ東側に小さな船着き場がありますが、その船着き場を守るように作られているのが時代を感じさせる石積みの防波堤です。防波堤の先に作られた赤い橋が、この「レトロな防波堤」に良く映えます。
高島海水浴場はこの防波堤から東に行った所にある海水浴場です。コバルトブルーの透き通るような海水の色が美しく、「日本の水浴場88選」に選ばれています。波が穏やかなので小さな子どもでも心配ありません。また海の家や温水シャワーなどの施設が整備されていて、快適な海水浴を楽しむことができます。
釣りが好きなら、高島の北側にある高島飛島磯釣り公園を訪ねてみましょう。飛島は高島とは防波堤でつながっていて、その上を歩いて行けるようになっています。磯釣り公園には、飛島の北側と東側そして防波堤の上に釣台が作られています。釣り竿などの釣具はレンタルでき、えさも買うことができます。

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  ©長崎市
  古めかしい石積みの防波堤

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  ©長崎市
  高島海水浴場は「日本の水浴場88選」に選ばれています。

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  高島と防波堤でつながっている高島飛島磯釣り公園

今度は高島から見える景色を紹介しましょう。高島の北部半分は森林地帯になっていて、最も高い標高115メートルの権現山には、「権現山公園・展望台」が作られています。この展望台に立つと、周辺の島々を初め、軍艦島（端島）や長崎半島の風景を眺めることができます。また天気が良いと、五島列島や天草地方の景色も遠望できます。そして見逃せないのが、夕方の風景や夜の満点の星空です。
高島にはもう一ヶ所、島の南端にも展望地があります。ここは「軍艦島が見える丘」と呼ばれていて、権現山公園の展望台から見るよりも軍艦島をもっと間近に見ることができます（手前に見えるのは中ノ島です）。さらに、この丘に行く途中に「軍艦島の不思議なスポット」と言われている場所があり、ここに立つと、軍艦島が本当の潜水艦のように見えるんですよ。

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  権現山公園から見た風景

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  ©長崎市
  高島から見えるサンセット

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  ©長崎市
  高島から見える中ノ島と軍艦島

かつて鉱山で栄えた高島ですが、炭坑閉鎖後は、無人島になってしまうのではと心配された時代がありました。けれどもトマトのビニールハウス栽培を始めることで無人島の危機を回避することができたのです。高島の土はもともと鉱業に適した地質でしたから、トマトの栽培には決して向いているとは言えませんでした。ところが、いろいろ工夫を重ね苦労の末、普通のトマトよりも糖度と栄養価が高いトマトの栽培に成功しました。このトマトは「たかしまフルーティトマト」とも呼ばれて、今では高島の名産品として人気を呼んでいます。

世界遺産の構成資産に登録された炭坑の跡が残り、美しい海岸のある高島。実際の炭坑の跡や資料館を訪ねて高島の歴史に触れてみるのはどうでしょう。その後はきれいな海で泳いだり、釣りを楽しんだり、そして最後は高島名物のフルーティトマトを味わったりお土産にしたり！
長崎港からフェリーで約30分で行ける高島にぜひ出かけて探索してみてください。

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  炭坑閉鎖後に作られたトマト栽培のビニールハウス

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  糖度と栄養価が高い「たかしまフルーティトマト」

写真提供：長崎県観光連盟、長崎市

文：Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ！そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。

掲載日： 2021/05/13
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