長崎県の中央部にあって、大村湾の東側に面した町「東彼杵町(ひがしそのぎちょう)」。町の山側には茶畑が広がり美しい風景を造り出しています。かつてはこの町の港に鯨が水揚げされ、鯨肉取引の中心として栄えました。また長崎街道の宿場町でもあった東彼杵町は、平戸街道の出発点にもなっています。東彼杵町にはどんなものがあると思いますか。さっそく探索に出かけてみましょう!
東彼杵町の中を走る国道205号線、その道路の海側にはこの町の観光の中心、東彼杵町歴史民俗資料館「歴史公園 彼杵の荘(そのぎのしょう)」があります。公園の道路脇には、水車をバックにした公園のモニュメントが建てられていて。そこに、「歴史公園彼杵の荘」の文字が書かれているのですぐわかります。
モニュメントの隣には、5世紀に作られた「ひさご塚古墳」があります。丘のように盛り上がった部分が後部で円形になっており、その横に長方形の盛り土部が繋がっています。このような古墳は前方後円墳と呼ばれ、ひょうたんのような形をしていることから「ひょうたん塚」とも呼ばれます。1950年に県の文化財に指定されました。
公園の端には「歴史民俗資料館」があります。この施設には歴史館と文化館の2つのコーナーがあり、宿場町として栄えた東彼杵町の様子や郷土芸能「千綿人形浄瑠璃」など、東彼杵町の歴史と文化を示す資料が展示されています。
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水舎をバックにした「歴史公園 彼杵の荘」のモニュメント
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5世紀に作られた「ひさご塚古墳」
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東彼杵町歴史民俗資料館「歴史公園 彼杵の荘(そのぎのしょう)」
歴史公園にはその他、「明治の民家」があり、道の駅「彼杵の荘」(公園と同じ名前です)も隣接しています。
明治の民家は茅葺屋根のかなり大きな家ですが、もともとこの場所にあったものではなく、東彼杵町の山中にあった富農「岳中家」の住居を1992年に東彼杵町が譲り受けて歴史公園に移したものです。民家の中に入って、当時の豊かな農家の生活を偲んでみましょう。
人気の道の駅「彼杵の荘」では「そのぎ茶」を初め東彼杵町の特産品を販売しています。そのぎ茶ソフトクリームは人気がありますよ。また、食事処もあります。ここでは鯨料理がおすすめです。かつて鯨の町として栄えた東彼杵町ですが、近年になって鯨の取引量は激減。現在、彼杵港に陸揚げされた鯨は、毎月1回の入札会で取引されています。
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山中にあった富農の民家を移築した「明治の民家」
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人気のある道の駅「彼杵の荘」
「そのぎ茶」は東彼杵町の名産の一つです。標高150~350メートルの小高い丘陵や山の斜面に作られた茶畑は、東彼杵町ならではの風景です。こうした茶畑は長崎県内のすべての茶畑の面積の55パーセントを占め、茶の生産量は県内産のお茶の60パーセントを占めています。
そのぎ茶はこの地方で長い間伝えられてきた玉緑茶のことで、蒸して仕上げるため蒸し製玉緑茶と呼ばれています。製茶したお茶の形状は一般的な煎茶の形状とは異なり、丸っこい形をしています。そしてあまり渋くなくまろやかな甘みがあります。日本全国で生産される緑茶に占めるそのぎ茶の割合はわずか3パーセント。その分、大変希少なお茶として知られています。
そのぎ茶の日本全国における評価は高く、2020年に開かれた第74回全国茶品評会では、安田光秀さんが最高の賞である農林水産大臣賞の「蒸し製玉緑茶部門」で受賞し、2019年には同じく「蒸し製玉緑茶部門」で東彼杵町が産地賞を受賞しました。
東彼杵町ではお茶文化を広めるために、2016年に「且座喫茶(しゃざきっさ)条例」を制定しました。且座喫茶とは禅の言葉で「ゆっくり座ってお茶をいかがですか」という意味です。この条例では宴会や会食の時などに水出し冷茶を出して乾杯するという習慣を広めることが定められています。またこの活動を通して、子どもたちにもお茶の良さを伝えていきたいと考えているのです。
なお、そのぎ茶は道の駅「彼杵の荘」などで購入できます。
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丘や山の斜面に作られたそのぎ茶の茶畑
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そのぎ茶のおいしさは高く評価されていて、何度も賞を獲得しています。
東彼杵町を走るJR九州・大村線にひなびた趣のある駅があります。これが無人駅の「千綿駅(ちわたえき)」です。千綿駅は1928年に開業し、1993年に開業当時の面影を維持する形で改築されました。ホームは1つで、線路も1本だけ。線路のすぐ向こう側には、低い塀を隔てて大村湾が広がっています。
ホームに立つと大村湾の美しい風景が一望に見渡せ、特に夕日に映える大村湾の風景は格別です。ユニークな特徴と美しい風景が魅力的な千綿駅には、たくさんの人が写真を撮りに訪れます。また、2014年の「青春18きっぷ」冬季号のポスターにも採用されました。そのポスターのキャッチコピーは「18時16分 小さな改札をくぐった。大きな夕日が迎えてくれた」。千綿駅の特徴をよく表現していますね。
東彼杵町の観光スポットとして歴史公園彼杵の荘、そのぎ茶、千綿駅を紹介しました。その背景を知らなかったら、そのまま通り過ぎてしまうかもしれないこれらの場所や物。そこに深い歴史や文化が息づいていますね。ぜひ足を運んでその素晴らしさを味わってみてください。
写真提供:長崎県観光連盟ほか
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
掲載日:
2020/12/14
※掲載している情報は記事公開時点のものです。変更される場合がありますので、お出かけの際には事前に各施設へお問い合わせください。
【東彼杵町歴史民俗資料館】〒859-3807 長崎県東彼杵町東彼杵郡彼杵宿郷430-5
【道の駅「彼杵の荘」】〒859-3807 長崎県東彼杵郡東彼杵町彼杵宿郷747-2
【千綿駅】〒859-3928 長崎県東彼杵町平似田郷750-3