「唐人屋敷」とは昔中国人が住んでいた地区のことですが、長崎市になぜそのような地区があったのでしょうか。このことを知るために、江戸時代にさかのぼってみましょう。
江戸時代の初期、幕府はキリスト教の布教を恐れ鎖国政策を取るようになりました。まず、1635年に日本人の渡航と帰国を禁止し、1639年にはポルトガル船の来航を禁じました。さらに1641年には出島を築いてオランダ商館をここに移し、オランダ人は出島だけにしか住めないように規制しました。
一方、当時「唐人」と呼ばれていた中国人は、鎖国政策が行われる前まで、比較的自由に交易活動が許されていて長崎のあちこちに住むことも認められていました。それが鎖国政策により、一か所に集められて住まなければいけなくなったのです。その居住地区が「唐人屋敷」でした。
その頃唐人屋敷には、2000人を収容できる住居が建てられていたと言われています。今ではこのエリアは一般的な住宅地になっていますが、いくつかの建物が修復され残っています。どんな建物があるのでしょうか、さっそく散策に出かけてみましょう。
散策のスタートは新地町にある「湊公園」。この辺りは昔、海を埋め立てて作った所で、唐人屋敷とも近いため、「霊星門」と呼ばれる中華門や中国庭園など中国文化の雰囲気が残る公園になっています。湊公園は、また、毎年開かれるランタンフェスティバルの主会場にもなっています。
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ランタンフェスティバルのメイン会場となる湊公園。
中国の専門家によって建てられた中華門(霊星門)
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公園内に作られた中国式庭園の近くにある丸い門。
土神堂(どじんどう)は、中国では「福徳正神」とも呼ばれ、土地や家を守り豊作をもたらしてくれる神様として、昔から信仰されてきた「土神」を祀っているところです。
唐人屋敷の最初の土神堂は1691年に、唐船の船主たちの願いが許され建てられました。その後、火災や原爆の被害を受け、石殿だけが残った状態で他はすべて崩壊してしまいました。現在の建物は、1977年に復元したものです。
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土神堂の門
門をくぐり、階段を登って奥にある土神堂の建物に進みます。
福建会館とは福建省出身の中国人が各地に建てた会館のことです。長崎市にある福建会館は、1868年「はちびん会館」として開館し、1897年に現在の福建会館に名前を変えました。
その後原爆によって本館である会議所の建物が崩壊したので、今残っている主な建物は正門と天后堂だけです。このうち天后堂は老朽化に伴い再構築し2018年に完成しました。
ランタンフェスティバルでは「ロウソク祈願四堂巡り」の会場として使われてます。
福建会館の敷地内には中国人から「国父」と呼ばれている孫文の像がたっています。
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中国人たちの会館だった福建会館
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敷地内には「国父」と慕われている孫文の像が立っています。
天后堂には航海安全の女神である天后聖母が祀られていますが、唐人屋敷には、福建会館にある天后堂のほかに、もう一つ天后堂があります。それは、1736年に南京地方の人々によって建てられたものです。現在の建物は1906年に再建築されました。この天后堂には、関帝も祀られているので別名「関帝堂」とも言います。堂の奥の方に行くと祭壇があって、そこに天后聖母の像が置かれています。天后聖母は一般に、「媽祖(まそ)」の名前で知られているので、こちらの名前の方がピンとくるかもしれませんね。
「関帝堂」とも呼ばれる天后堂の門
現在の建物は1906年に再構築されました。
一般的に媽祖と呼ばれている天后聖母が祀られています。
観音堂は天后堂から歩いて5分くらいの所にあります。周りには民家が建っているのでちょっとわかりにくいかもしれません。案内板を見ながら進んでください。
観音堂にはアーチ型の門が建っています。これは復元したものではなく昔のまま残っているのだそうです。門の後ろに立っている建物は、もともと1737年に建てられ1917年に改築されたものです。堂内には、慈悲深い神様である千手観音菩薩と商売繁盛の神様である関帝が祀られています。
唐人屋敷は、毎年行われるランタンフェスティバルの会場としても親しまれている所ですが、フェスティバルでない時に出かけてみると、また違った面が見えてくるのではないでしょうか。海外交易のために長崎に住んでいた唐人の歴史の一部として、湊公園、土神堂、福建会館、天后堂、観音堂を訪ねてみてください。
写真提供:長崎県観光連盟 ほか
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
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昔のままの姿を残す観音堂の門
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千手観音菩薩と関帝が祀られています。
掲載日:
2019/07/02
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