平戸市北部にある「松浦(まつら)史料博物館」は平戸の藩主松浦(まつら)氏が残したいろいろな資料を展示している博物館です。平戸は昔、海外交易の拠点にもなっていたところです。そのため、他の所ではみられないユニークな特徴が見られます。ではさっそく、松浦史料博物館を訪ねてみましょう。
松浦史料博物館は平戸の藩主松浦氏が1893年に私邸として建てた「鶴ヶ峯邸」を1955年に改築して開館されたものです。長崎県で一番歴史の長い博物館と言われています。平戸市鏡川町の高台にあり、周囲を石垣で囲まれているので遠くから見るとお城のように見えます。建物に行きつくまでには長い階段があり、それを登りつめると博物館の建物が見えてきます。
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松浦史料博物館遠望(崎方公園下から)
©長崎県観光連盟
博物館までは長い階段が続きます。
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博物館の建物が間近に見えてきました。
松浦史料博物館の敷地内には千歳閣、九皐斎・玄関の3つの建物があります。千歳閣はその中でも一番大きく立派な建物で、お客さんが来た時に迎え入れるのに使われました。博物館はこの3つの建物の中を少し改造して整えたものですが、建物の外観は昔の状態を保っています。展示室内は天井も高く広々としています。天井にはシャンデリアを思わせるような吊り下げ照明が取り付けられていて、室内全体にどこか西洋的な雰囲気が漂います。
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松浦史料博物館「千歳閣」外観
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館内は天井が高く広々としています。天井の照明はシャンデリアの様で豪華です。
では、平戸藩主の松浦氏とはどんな一族だったのでしょう。
松浦氏は江戸時代に平戸藩を治めていた一族ですが、歴史をたどると平安時代にまでさかのぼります。それほど長い間武将としての地位を守った一族でした。江戸時代の平戸藩というのは、今の平戸市だけでなく、佐世保市、壱岐市、五島列島など広い範囲を含んでいました。平戸藩は海外との交易を通して経済が豊かだったところです。そしてこのことが、松浦氏が長い間栄えた一つの理由と考えられています。
館内にはそんな歴史を示すものとして関係のあったオランダ人の肖像画などが展示されています。また、オランダ船首像はこの博物館で所蔵されていますが、普通は平戸オランダ商館に展示されています。その他、館内には26代藩主「松浦 鎮信(まつら しげのぶ)」など藩主や主要人物の肖像が展示されています。博物館から南西に15分ほど歩いた所にある正宗寺には、江戸後期に28代藩主を務めた松浦隆信(宗陽)のお墓も残されています。
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26代目藩主の松浦鎮信の肖像
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松浦史料博物館内に所蔵されているオランダ船首像。お土産用のレプリカも売っています。
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28代藩主松浦隆信(宗陽)の墓
博物館の中にはその他にも数多くの物が展示されています。そのうちから3つ選んで紹介しましょう。
1つ目は「松浦家家紋入古旗」。昔はそれぞれの藩主は特有の旗を作って立てていました。今で言う会社の「ロゴ」と同じですね。松浦氏の旗には下の写真のように三星(みつぼし)と梶葉(かじのは)が描かれていますが、その間に2本の線が引かれています。この線は「二引両(ふたつびきりょう)」と呼ばれています。
2つ目の展示物は、「紺糸威肩白赤胴丸」。これは、室町時代に作られた鎧(よろい)と兜(かぶと)のことで、先ほど紹介した26代松浦鎮信が大友義鎮から受け渡されたものです。
3つ目の展示物は「地球儀」です。1700年にオランダのアムステルダムで作られたもので出島から輸入され松浦氏のところに届いたものです。この地球儀はかなり大きく、航海のために作られたため「ポルトラーノ」という線がたくさん引かれています。
館内にはこのほかにもまだまだ展示物がたくさんありますから時間を十分とって見学してください。
©松浦史料博物館
松浦氏の旗「松浦家家紋入古旗」
©松浦史料博物館
大友氏から受け継がれた鎧と兜「紺糸威肩白赤胴丸」
©松浦史料博物館
出島を通ってオランダから輸入された地球儀
松浦史料博物館の敷地内には、博物館から50メートルほど離れた所に「閑雲亭(かんうんてい)」という茶室があります。元々は1893年に作られたものですが、1987年に台風で倒壊したため再築されました。茶室のデザインは、茶道を始めた千利休のコンセプトに基づいた庶民的で質素なものです。自然の材料を使って作られているので、その造りは「草庵茶室」と呼ばれています。この茶室では、今でもお茶とお菓子がいただけます。博物館の見学が終わったら、ここで一休みしましょう。
平安時代の昔から平戸地方を治めていた松浦氏。松浦史料博物館には、その一族が残した貴重な品々が数多く展示されています。その展示物を見ると平戸地方がどんな時代を通って来たのかがよくわかりますね。また、ひっそりと佇む茶室閑雲亭ではゆったりとした時間が過ごすことができます。ぜひ出かけて平戸と松浦氏の歴史を辿ってみてください。
写真提供:長崎県観光連盟・松浦史料博物館・平戸市ほか
文:Setsuko Truong
メルボルン在住のフリーランスライター。旅とアートが趣味で日本国内・海外あちこち旅してきました。長崎は好きな町の一つ!そんな長崎の魅力をお伝えしたいと思います。
©平戸市文化観光商工部
庶民的で質素な茶室閑雲亭
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茶室の中では今でもお茶とお菓子が楽しめます。
©平戸市文化観光商工部
閑雲亭の庭でもお茶会が開かれることがあります。
掲載日:
2019/06/10
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